経済人が考える日本の課題 財界セミナーの議論【前編】
「報道部畑中デスクの独り言」(第377回) ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、財界セミナーについて。
8月になりました。経済界では7月に企業トップが一堂に会して夏季セミナーや政策懇談会が行われ、現在おかれた日本の課題について議論します。 経済三団体のうち、「財界総本山」と言われる経団連は、夏季セミナーで新しいデジタル技術、脱炭素電源としての原発活用などを盛り込んだ総括提言をまとめました。また、日本商工会議所は中小企業が会員、夏季政策懇談会では価格転嫁など「肌感覚」の議論が交わされました。 一方、経済同友会は企業経営者が主な会員ですが、個人として参加する団体です。そのため、経済同友会のセミナーは自由闊達な議論で定評があります。今回はその経済同友会のセミナーのもようをまとめました。 議論のテーマは社会保障、政治改革、人口減少社会、共助資本主義、ダイバーシティ、投資拡大、生成AI、地政学的リスクなど、多岐にわたりました。この中で印象に残った3つのテーマを取り上げます。 ■政治改革、政治を企業の世界に置き換えると…… まずは政治改革。国会は今年に入って「政治とカネ」の問題に明け暮れました。政治資金規正法は改正されましたが、改革は道半ば。そんな中、セミナーでは政治の世界を、民間企業の世界と置き換えるとどうなるかという議論があり、これがなかなか新鮮でした。 「カネの扱いは情報開示基準、企業から見ると政党は全くなってない。政党は実は執行部そのもの、トップそのもの。政治にはトップを規定する法律がない」 岡三証券グループの新芝宏之社長は企業と政党で類似性のある点をまとめた上で、現状の課題を指摘しました。その類似性、具体的には…… ・党首選や幹部の登用≒企業の役員選任 ・マニフェスト≒企業の中期経営計画 ・政党候補者、教育システム≒企業の人事制度、政党の監査制度 ・政治資金規正≒企業の情報開示基準 政治の世界と民間企業の世界、これらが置き換えられるというわけです。 企業のコンプライアンス、ガバナンスの意識は政治の世界に活かされるべき……一方で、利潤を追求する企業と、政治の世界では相いれないものもあり、企業トップが苦慮する場面もありました。 「企業におけるガバナンスは取締役会、指名方針委員会が(担う)。政党はどこでつくるのか、自分たちで決めるので自分たちに不都合なことは決めない。ほかのステークホルダーから、やんややんや言うしかない。政治家は選挙に落ちたら意味がない、長期的な取り組みについてのインセンティブをつくらないといけない」(マネーフォワード・辻庸介社長) 「国というものに置き換えてみると、政党が執行部で、国民、市民は社員ではないか。企業では、社員と企業経営者の対話の中でお互いが切磋琢磨されていく。これを同じように国のレベルに上げていくとすると、国民、市民の政治リテラシーを上げるしかない。普段から市民との会話の中でそういった雰囲気をつくっていくのが大事なのではないか」(ANAホールディングス・平子裕志特別顧問)