井上尚弥の次戦の相手、グッドマンとはどんなボクサーか? 対戦経験ある前日本バンタム級王者は「距離の遠さ」を実感
敵地でしたから、倒してやろうと左ストレートを打ち続けましたが、ダウンを取ったラウンド以外は全部、向こうのポイントでしたね。各回、ちょっとずつ負けていたのかなと思います。本当に技術の高い選手でした。僕はガムシャラに攻めましたが、グッドマンは余裕があったんじゃないかな」 ジャッジ3名が7ポイント差と採点し、日本人チャレンジャーは敗れた。 【井上vsグッドマンはどんな試合になる?】 そのグッドマンが井上尚弥に挑む一戦について、富施は語る。 「井上尚弥選手との試合は、ファーストラウンドが楽しみです。グッドマンは、左手でリズムをとりながら好戦的にプレッシャーをかけますね。井上選手はなんでもできますが、プレッシャーのかけ合い、そこでどちらが主導権を握るか見たいです。いずれはグッドマンが倒されるでしょうが、初回の駆け引きが楽しみですね。流れに注目しています。 対戦した人間からすると、挑戦者にもちょっとは頑張ってほしいです。でも、井上選手って異次元のチャンピオンじゃないですか。グッドマンは僕でも渡り合えた選手ですが、井上選手は世界チャンピオンのなかでもナンバーワンというスーパーな存在です。ほかの王者が相手だったら、グッドマンも世界王者になれた可能性があると思うんですよ。でも、井上選手に勝つことは難しいでしょう。本当に、規格外ですから。 1ラウンド目は距離の取り合いをして、徐々にリードの差し合いで井上選手がアドバンテージを取り、グッドマンがディフェンシブになっていく。挑戦者はどんどん削られていって、早ければ3回、遅くとも5ラウンド以内に井上選手がKO勝ちすると見ています。井上選手のボディブローが有効に決まって、挑戦者がダメージを蓄積してしまうんじゃないですかね。 グッドマンは『想定したよりも距離が遠かった』というのが僕の実感です。それをいかに潰すか、井上選手の戦いぶりが楽しみです。僕はけっこう、グッドマンのパンチをもらってしまいましたが、距離の取り合いでも井上選手が勝つのか、それともプレッシャーをかけていくのか、そのあたりのリングの使い方に注視します。距離も井上選手がコントロールしたら、グッドマンは戦いようがないですよ」 いずれにしても、井上尚弥の圧勝は間違いないとしながら、富施は言葉を続けた。 「グッドマンはデビュー以来19連勝中ですが、全勝できるだけの力を持った、テクニシャンです。相手に当てさせず、自分が当てるスタイルで、まとめ方も器用です。パンチ力よりも、連打で相手をストップするタイプと呼べるでしょう。 でも、井上選手はレベルが違います。第一に、踏み込みのスピードがほかの選手と比較にならないくらい速い。1度パンチをヒットしてから、もう一回踏み込む。ステップインの連続が頭抜けています。1発だけだと、距離を取るのがうまいグッドマンは対応できるかもしれません。でも、連動した踏み込み、連打というのは味わったことがないでしょう。 井上選手はまったく違う次元、土俵で戦っている人なので、僕なんかが語っていい存在じゃないですけれどね......。ボクサーはもちろん、ファンのみなさんも憧れていますよ。野球なら、大谷翔平選手のような唯一無二の男でしょう」 グッドマン戦を糧とし、今年4月に日本バンタム級王座に就いた富施だが、同7月の初防衛戦でタイトルを手放している。来たる12月20日、自身も復帰戦を迎える。 「次に勝って、日本かOPBF東洋太平洋かWBOアジアのタイトルに絡んでいきたいです。もう一回、ベルトを獲りたいですね」 富施が何度も「異次元」と口にした、28戦全勝25KOの"モンスター"は2025年1月24日、どんな内容で白星を加えるか。
林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.