【推しの子】の「すしのこ」発売、舞台裏をタマノイ酢新社長に聞く 61年間続く“すしのこ”デザインを「有馬かな」へ変更する挑戦
◆老舗企業、伝統と【推しの子】のような革新が必要
――安土桃山時代にルーツを持つ歴史ある会社を、今後どのように舵取りしますか? 「伝統と革新」をテーマに掲げています。 伝統的なものは守っていかないといけませんが、伝統は革新によって守られ、広がっていくと考えています。 今までのやり方や伝統を大事にするところと、新しくチャレンジするところとのバランスを取りながら経営していきたいと思っています。 今あるものを0にするという革新もあるのかもしれませんが、100あるうちの50を変えて、残りの50を守るというのが、私の思い描く革新です。 今回の「推しの子」とのコラボがまさにそうです。 守るために変えるという手法があっていいのではないでしょうか。 「すしのこ」が好例でしたが、失敗を恐れずに挑戦することを若い社員に大事にしてほしい。 「今までこういうやり方だから、その通りやってみる」「今までやって無理だったから、諦める」といったように前例を踏襲するだけではなく、若いメンバーの意見を吸い上げて、それを行動に移していく、挑戦していく。 そうすることで、人が成長する環境をつくっていくことが私の大事な役割だと思っています。 過去の伝統にとらわれすぎて、新しいことにチャレンジできないような環境にはしたくない。 伝統を革新によってしっかりと未来につなげていきたいですね。 ――100年企業を承継するプレッシャーは感じますか? ないと言ったら嘘になりますが、誰もが自分の人生の中でやれることにチャレンジしていくしかありません。 そこは、継ぐのが20年企業だろうが老舗の100年企業だろうが、そんなに変わらないと思います。 ただ1つ言えるとしたら、今ある会社の状況や環境、人材などは、私が1人でつくってきたものではありません。 先代や先輩社員たちが作ってきてくれたものです。 私には7歳と4歳の息子がいます。 自分が中継ぎとして、先人から受け継いだバトンを次の世代にしっかりと渡していけるようにやっていきたいですね。
■プロフィール
タマノイ酢株式会社 安土桃山時代の1590年頃、堺で製造された酢に用いられた商標「玉廼井(タマノイ)」にルーツを持つ。1907(明治40)年、5つの蔵が集まり、前身となる大阪造酢合名会社を設立し、1963年に「タマノ井酢」、1994年に「タマノイ酢」に社名変更した。1963年には、世界で初めて酢の粉末化に成功し、ロングセラー商品「すしのこ」を発売した。大阪府堺市に本社を置く、醸造酢、粉末酢、各種調味料、レトルト食品および菓子・健康飲料などの製造・販売をする食品メーカー。1907年創業。代表製品は、世界で初めての粉末酢「すしのこ」やビネガードリンクのパイオニア「はちみつ黒酢ダイエット」。