廃止のウワサが絶えない「青春18きっぷ」 強みを生かせば未来は明るい? 新しい旅行需要への対応必須
毎年、「いよいよ廃止か」と噂されながら、しぶとく残っているのがJR各社が販売する「青春18きっぷ」です。青春18きっぷは原則として、JR全線の普通列車、快速列車に乗車できる季節限定の切符。ここ数年、青春18きっぷが廃止か否かという記事を見かけますが、筆者は新しい旅行需要にマッチすれば、まだまだ青春18きっぷが活躍できるのでは、と思っています。旅行需要に関するデータを参考にしながら、青春18きっぷの近未来を予想します。 【写真】3月に開業した北陸新幹線敦賀駅、青春18きっぷの需要は!? ■今の国内旅行マインドは? JTB総合研究所は6月に「旅行に対する今の気持ち:国内旅行・海外旅行への意識調査」の調査結果をまとめました。調査期間は3月です。 まず、経済面から見る旅行への意識です。「家計に余裕がない」と回答した割合は全体で48%に。特に女性30~50代の56~58%が「生活に余裕がない」と回答しました。 また、「生活費も、趣味や旅行も節約している」(28.1%)が、「普段の生活は切り詰めるが、趣味や旅行など自分の好きなことにはお金を惜しまない」(17.3%)を10ポイント以上も上回る結果に。報道では景気が上向きになったと言われますが、世の中全体は節約モードであることがわかります。 次にオーバーツーリズム問題など、観光地の混雑は旅行者にどのような影響を与えているのでしょうか。観光地の混雑に関して、「旅行への影響はない」「どちらともいえない」「旅行に行きにくくなった」の3択です。 全体ですと、「旅行に行きにくくなった」が41.9%を占め、年代が上がるほど、割合が高くなっていることがわかります。つまり、観光地の混雑は旅行を避ける要因の一つになっているのです。 ところで、今年3月に北陸新幹線金沢~敦賀間が開業しました。北陸新幹線を利用した旅行の意向を尋ねたところ、「してみたい」と回答したのは12.1%でした。居住地域別に北陸地方を除く北陸新幹線の利用意向が高い県は、埼玉県20.2%、長野県18.2%、神奈川県18.1%、山形県17.2%、千葉県16.8%と関東、東北など東日本において北陸への意識が高いことがわかります。 ちなみに、福井県によると、開業日から8月15日まで、越前たけふ駅を除いた福井県内にある新幹線停車駅周辺を訪れた人数は昨年比+23%でした。特に関東圏からの人数は4割増とのことです。 ■青春18きっぷの新たな強みと弱みを考える 「節約志向」「混雑地を避けたい」…青春18きっぷはこのようなリクエストにマッチする切符といえます。青春18きっぷの価格は1セット(5回分、5人分)で12,050円、1回分・1人分は2,410円です。JR各社はエリアごとに割引切符を販売していますが、全国規模で青春18きっぷ以上に割安なきっぷはありません。 また、青春18きっぷの魅力は見知らぬ駅でふらりと降りられること。SuicaやICOCAといった交通系ICカードは途中下車できません。そのため、混雑とは無縁の無人駅に降りられるという青春18きっぷの魅力は捨てがたいと思います。 一方、現在のニーズとマッチしない点もあります。北陸新幹線開業に伴い、JR北陸本線を引き継いだ第三セクター鉄道では、一部区間の通過利用を除き、青春18きっぷは使えません。 そのため、JR越美北線の列車が発車する福井駅での乗車・下車はできません。金沢駅も同様です。つまり、北陸新幹線と組み合わせる旅行であれば、北陸で使えるフリー切符の使用が一般的でしょう。 北陸では使いづらくなった青春18きっぷですが、まだまだ現在の旅行スタイルに対応できる切符といえます。新たな旅行スタイル、新たな需要にマッチすれば、青春18きっぷの未来に希望が持てるのでは、と筆者は楽天的に考えています。 (まいどなニュース特約・新田 浩之)
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