視聴者に見放され「マスコミの代弁者」に…"斎藤元彦知事の復活"が示すモーニングショー・玉川徹氏の限界
■「ワイドショーの理想」を体現していた あくまで業界の論理からみれば、という但し書きはつくにせよ、継続によって競争を勝ち上がった羽鳥─玉川体制はワイドショーの理想を体現したといっていいのだ。 私は拙著『「嫌われ者」の正体』で玉川徹を追いかけたルポを書いた。本人への取材は「多忙」を理由に断られてしまったが、これはこれで面白い展開になったなと思っていた。 ノンフィクションの歴史の中で培われてきた方法の一つに、本人を取材できなくても周辺を徹底的に掘り下げることで人物を浮き彫りにするというものがある。それは時に本人が見せたい自分の姿を雄弁に語る以上にくっきりと人間を浮き彫りにする。その方法を試す良い機会になるからだ。 ■テレビマンとしての3つの特徴 先にも記したように、玉川本人への取材はかなわなかったが、テレビ朝日の現役社員、OB、制作現場のスタッフが取材に応じてくれた。現役社員やスタッフの中には通称「チーム玉川」の一員――というより右腕といってもいいだろう――として、彼と長年ワイドショーの現場で奮闘してきた元ディレクターらも含まれている。 本人以上に肉声が表に出てこない裏方の証言と玉川の著作から、生粋のワイドショー屋、情報番組屋としての玉川の特徴を指摘することは、決して難しいことではなかった。さしあたり3点、指摘できる。 第一に一貫した反官僚主義、第二に信念と視聴率の折り合い、そして第三に「野党」気質である。 玉川は1963年生まれである。宮城県の名門、仙台二高から京都大学に進学し、農学部で農業工学を専攻し大学院にまで進んでいる。修士課程を終えてバブル期の1989年にテレ朝に入社し、最初の配属先が「内田忠男モーニングショー」の芸能班だったことが人生を決定づけた。以降、ワイドショーを軸にキャリアを重ねてきた。 第1の特徴から見ていこう。玉川が一貫してこだわってきたテーマの一つは、官僚による税金の無駄遣いだ。彼を特徴づける「反官僚」の原点は、著作の中に見いだせる。繰り返し書いているエピソードがあるからだ。彼と同じ学科の学生には国家公務員試験I種、すなわちキャリア官僚を目指す学生が一定数いた。