【全国47都道府県《知事の素顔》を大公開】群馬、広島、静岡…「本物の知事」が明かす、その「頭の中」と「ひそかな野望」
群馬県知事の「野望」
地方の県庁所在地ではたいてい、お城や大名屋敷の跡地近くに役所がある。住民が直に票を投じて選ばれる知事は、まさに「現代の殿様」であり「日本の大統領」である。 【一覧】意外と知らない…全国47都道府県「知事の素顔」を大公開 事実、その権限は絶大だ。群馬県の山本一太知事は2019年、4期24年務めた参議院議員から転身した。閣僚も務め、順風満帆の政治家人生だったが、いまはこう語る。 「もちろん国会議員や大臣の仕事も、やりがいはありました。でも大臣は部長であってCEOじゃない。県民の先頭に立って故郷をよくする――そんな知事の醍醐味を経験すると、本当に知事になってよかったと感じます」 昨今、知事たちがなにかと話題だ。兵庫県で起こったゴタゴタは、地方政治のややこしさや権力闘争の苛烈さを全国に知らしめたが、それは他の地域も変わらない。彼らは日々さまざまなものと戦っているのである。 山本知事は2021年、「都道府県魅力度ランキング」で群馬が下位になったことに猛反論し、「大人げない」と批判を受けた。 「でも、知事には県内の意識を変える役割もあると思うんです。県民に希望を持ってもらうことも仕事のひとつですから。 私のモットーは、何事もエンタメ的発想が大事ということ。たとえば群馬は若者のコロナワクチン接種率が高かったのですが、県を代表する企業のスバルに協力してもらい、『接種を受けたらクルマが当たる』というキャンペーンを実施しました。県のYouTubeチャンネルは登録者数の伸び率が日本一ですし、私が直接、東宝や東映、松竹といった映画会社のトップを訪ねて、ロケ誘致に力を注いでいます。 東京まで新幹線で50分で行ける群馬は、もっと面白い県になれる。人は面白いと感じなければ動きませんからね」
知事の経歴には「パターン」がある
記事末尾に47都道府県の知事の経歴をまとめた。東京都の小池百合子知事や大阪府の吉村洋文知事を除いて、地元以外は顔も名前も知らないのが普通だろう。 ただ、眺めていると気がつくのが、経歴にパターンがあるということだ。 まず、山本知事のように国会議員や地方議員から転身するケース。政治家である点に変わりはないが、フィールドを転じた人々だ。 次に民間からの就任。神奈川県の黒岩祐治知事のようなキャスター、吉村府知事のような弁護士、その他にはIT企業やコンサルティング会社からの転身が目立つが、中には長崎県の大石賢吾知事のような元医師もいる。 そして最後に、官僚や公務員からの転身。特に多いのが、総務省や国交・経産省などの霞が関官庁から出向し、そのまま知事になるケースである。 静岡県の鈴木康友知事は、旧民主党の衆院議員から故郷の浜松に戻って市長となり、2024年5月に知事に選ばれた。 「国会議員のときも全力投球でしたが、やはり貢献できても700分の1か……という思いはどこかにありましたし、自分の場合はずっと野党暮らしでした。いっぽうで、首長は働けば働くだけ成果が出る。大きなやりがいを感じています」 ご当地の懸案といえば、何といってもリニア中央新幹線だろう。川勝平太前知事は強硬なリニア反対派で知られたが、鈴木知事はこう語る。 「私はリニア推進と、大井川の水や南アルプスの環境の保全は両立できると考えています。いまはそのための課題3分野28項目を整理して、ひとつひとつ解決するための道筋を作っている最中です。 静岡は気候がよく、特にアウトドアファンからは『働きながら遊べる楽園のような県だ』との声もいただきます。自然と都市が共存する静岡には、これから二拠点生活をする人も増えるはず。オフィス機能も備えた伊豆の温泉で、湯に浸かりながら仕事ができる――そんな生活を提案していきたいと考えています」