『M-1グランプリ』令和ロマン史上初の連覇の一方で“3つの不安”は解消されたのか
高視聴率にXトレンドランキングも席巻
22日夜、『M-1グランプリ2024』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が生放送され、令和ロマンが史上初の2連覇を達成。過去最多1万330組の頂点に輝き、記念すべき第20代王者となった。 【写真】令和ロマン、優勝決定の瞬間 今大会は放送中からX(Twitter)のトレンドランキングを席巻したほか、視聴率(19:00~20:10)は関東が個人12.7%・世帯18.0%、関西が個人18.4%・世帯25.5%を記録(ビデオリサーチ調べ)。少なくとも昨年と同等レベルの盛り上がりだったことは間違いないだろう。 しかし、今回は『M-1』の象徴的な存在だった松本人志が不在であった上に、下記3点の不安が指摘されていた。 1つ目は『キングオブコント2024』(TBS)と『女芸人No.1決定戦 THE W 2024』(日本テレビ)に「審査に否定的な声があがる」という事態が続いていたこと。2つ目が近年、放送後にテレビ業界を盛り上げる新星が誕生していなかったこと。3つ目が2015年の復活後、初めてTBS日曜劇場の最終回と放送がバッティングしたこと。 はたして3つの不安点は解消できたのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
■「点差をつけない問題」は解消か まず審査についての不安はどうだったのか。今回は審査員が9年ぶりに7人から9人に増え、しかも「全員漫才師」になり、その人選がフィーチャーされた。しかし、本質は人選ではなく審査基準そのものだろう。今年の『キングオブコント』は「審査員が点差をつけない」、『THE W』は「民意と離れている」という批判の声があがり、「『M-1』は大丈夫か」と不安視する向きもあった。 実際、『キングオブコント』の採点は500点満点中、ファーストステージでは10組中上位8組が8点差以内、ファイナルステージでは3組が3点以内に集中。計1,000点での総合得点でも1~3位が2点差以内と審査員たちがほとんど点差をつけないことが問題視された。 一方、『THE W』は6人の審査員に視聴者票の計7票で勝者を決める形式だったが、視聴者票が入った上で勝ったのは10戦中3回のみ。しかもそのうち2回は勝敗が分かりやすい満票での圧勝であり、「面白くないほうが勝つ大会」とまで言われてしまった。 その点、今回の『M-1』はどうだったのか。海原やすよ ともこ・海原ともこが10組中9組を94~97点の4点差以内に集中させたほか、オードリー・若林正恭、ナイツ・塙宣之、かまいたち・山内健司が無難な90点台前半に集めるなど、点差をつけたがらない審査員がいたのは確かだろう。 しかし、博多華丸・大吉の博多大吉、NON STYLE・石田明、アンタッチャブル・柴田英嗣がしっかり点差をつけることでそれをカバーしていた。今回、審査員への批判が少なかったのは「全員漫才師」でまとめつつ9人に増やした効果であり、1人にかかるリスクが分散されて減ったことを物語っている。 もう1つの「審査が民意と離れている」に関しても、例年以上に不満の声が少ないのは、「自分が面白かったのは〇〇だけど、優勝コンビには満足している」と思えたからだろう。ネット上の声を見ていても、審査員の人選と人数増によって「より競技化した」という印象が濃くなり、スキルを感じさせた令和ロマンの優勝に納得しやすかった感がある。 ただ、「結局ほめてばかりで面白くない」「点差をつけた理由を話してほしい」という核心を突くような不満も散見されただけに、来年はもう少し踏み込んだコメントに期待したいところだ。