データ分析は「何を解くか」を明らかにせよ
■データ分析は直接的に課題を解決しない 例えば、工場の稼働率が低いという「問題」を解消するために、突発故障を減らすという「課題」を達成したいとしましょう。あるいは、自社製品の売上げが伸びないという「問題」を解消するために、消費者の購買意欲を上げるという「課題」を達成したいとしましょう。さて、これでデータ分析に着手できるでしょうか。 データ分析するには、「何を解くか」を明らかにしなければなりません。例えば、何を予測したいか、どういう仮説を検証したいか、それを明らかにせずにデータ分析しても、単なる数字遊びになるだけです。だから、データ分析で何を解けば課題を達成できるか、を考えなければならないのです。 では、課題に向き合うだけで、データ分析で何を解きたいか見えてくるでしょうか。「突発故障を防ぐ」という課題に向き合うだけで、データ分析で何を解きたいか見えてくるでしょうか。「購買意欲を上げる」という課題に向き合うだけで、データ分析で何を解きたいのかが見えてくるでしょうか。 もしあなたが工場スタッフあるいはマーケティング担当者であるならば、これら課題を見るだけで、データ分析で何を解くかのアイデアは湧いてくるかもしれません。例えば、「故障発生前にそれを予測するモデルを作る」とか「購買意欲の高い顧客の購買理由を明らかにする」などが考えられます。でもそれは、「突発故障を防ぐ」や「購買意欲を上げる」という言葉に誘発されて出てきた思いつきであり、「突発故障を防ぐ」や「購買意欲を上げる」には何を解けばいいかを論理的に考えたものではないでしょう。 予測や仮説は、直接的には課題を解決しません。予測や仮説を用いて何らかのアクションを起こすことで、課題を解決するのです。当たり前のことですよね。そのアクションとは何かを普段から意識していないから、論理的に考えられないのです。 もちろん、思いつきの「何を解くか」は、結果的に適切な場合もあります。しかし、「課題」からいきなり「何を解くか」に飛躍しているため、論理的な整合性を確認することはできません。そのため、もし「何を解くか」が課題解決につながらなかったとしても、そのこと自体に気付けないのです。 論理的に考えるならば、まずは「課題」を解決するにはどのような「アクション」を起こせばいいかを考え、次にその「アクション」を起こすにはデータ分析で「何を解くか」を考えるべきでしょう。このように順序だてて考えることで、論理の飛躍を防ぎ、また、論理的な矛盾に気付き、「何を解くか」を間違えないようになります。 それでは、この「アクション」とは一体何なのでしょうか。この疑問を解消してくれたのが、前出のダニエル・カーネマンの言葉でした。