2025年に財務省はどう動く 専業主婦の手当や保険が標的、拠出金や増税で収入確保も狙う 子ども・子育て予算にメスは?
【日本の解き方】 2025年度の財政状況については、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が黒字になると試算されている。 【ひと目でわかる】財務省への批判がXで急増している まず、言っておきたいことは、今のPBは正しくない。というのは、本コラムで何度も指摘しているが、政府の一部だけを取り出してPBを計算しているからだ。真の政府の財政状況を示したければ、中央銀行を含めた統合政府の貸借対照表(バランスシート)をみるべきで、そのうえで「統合政府のPB」をきちんと計算すべきだ。 それを行えば、とっくに黒字化していることが分かるだろう。ちなみに、国際通貨基金(IMF)のデータによる統合政府でみれば、日本の財政状況は先進7カ国(G7)の中でカナダに次いで2位の健全度である。 政府の計算するPBの黒字化は、昨年7月29日、経済財政諮問会議に提出された「中長期の経済財政に関する試算」で示されている。そこで想定されていた名目経済成長率は、24年度に3・0%、25年度に2・8%だったが、12月25日に閣議決定された経済見通しでは、24年度に2・9%、25年度に2・7%なので、25年度のPB黒字化は、今のところ変化はないだろう。 これを前提として、財務省は何を狙ってくるのか。12月26日に経済財政諮問会議が開かれ、民間4委員が「マクロ経済財政運営」というタイトルで資料を出している。民間委員のペーパーは、財務省の〝隠れみの〟とされているので、そこから財務省の意図を読んでみよう。 「103万円の壁」問題の解決には一定の理解を示しつつ、企業の配偶者手当と、専業主婦ら「3号被保険者制度」の見直しに言及している。企業に対応を求め、3号被保険者を廃止し、そこから保険料を取ろうという意図がうかがえる。 また、「金利のある世界」になるので、財政に対する信任が欠かせないとして、PB黒字化という財政健全化の旗は降ろさないという。今のPBは正しくないが、その間違いを「これからも無視していく」ということだ。 そのうえで「防衛力強化」や「子ども・子育て政策」にかかる恒常的な支出増について、歳出改革、税外収入、税制措置などの財源を計画的に確保していくべきだとしている。「子ども・子育て拠出金」は税ではないが、今後も取り続け、防衛増税も外国為替資金特別会計などの財源はあるが、やめないということだ。子ども・子育て予算の中身は、NPO団体への丸投げが多いが、そうしたものにメスは入れないのだろうか。
以前の本コラムで、財務省がしばしば引用する内閣府の「短期日本経済マクロ計量モデル」の問題点を指摘した。減税が何倍の国内総支出などの増加をもたらすかを示す「減税乗数」が異様に低いのだ。最近の研究では、政府の財政支出の効果を示す「政府支出乗数」と減税乗数は同じか、減税乗数がやや高いというものが多い。せめて、政府のモデルを修正して財政運営をすべきだろう。それを今年1月に示される新たな中長期試算に反映すべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)