キャニオンルート一般開放延期「痛手」「誘客するのみ」 宇奈月温泉、食や芸術PR
黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放と黒部峡谷鉄道の全線開通が来年も見送られる見通しになった13日、富山県内の旅行会社やホテル関係者からは「痛手だ」「そんなに被害が大きかったのか」と落胆が広がった。宇奈月温泉の関係者からは「魅力ある富山の食や、歴史と伝統の息づく芸術文化の力で引き続き誘客に努めるのみだ」とし、能登半島地震の影響を抑えようとする声が聞かれた。 【写真】橋桁が落石でへこんだ鐘釣橋 「キャニオンルートは観光の起爆剤だったのに」。県旅行業協会長、全国旅行業協会県支部長を務める旅行企画(魚津市)の桶屋諭喜社長は肩を落とした。同社では一般開放に備え、キャニオンルートをメインにした旅行プランを準備していたといい、「このまま関心が薄れてしまうことが心配だ」と話した。 「まさか、ここまで被害が大きかったとは思わなかった」と驚くのは、ANAクラウンプラザホテル富山(富山市)の森川忍総支配人。前任地だった長野県大町市のホテル時代からキャニオンルートの動向を気にしていたとし「今後、どのような影響が出るのか。注視したい」と口を結んだ。 一方、宇奈月温泉の旅館「延楽」社長の濱田政利宇奈月温泉旅館協同組合理事長は「残念なことだが、自然が相手だから仕方がない」と述べた。地元ゆかりの作品を所蔵するセレネ美術館や、黒部峡谷の自然や歴史の魅力を観光客にPRするほか、改装で露天風呂付きの客室を増やすなどし、集客を図るとした。 「海栄RYOKANS 延対寺荘」の延対寺駿支配人も、キャニオンルートに関して利用客から多く問い合わせがあったとするものの、「黒部の豊かな食の魅力などで、宇奈月をしっかりPRするしかない」と誘客に向けて前を向いた。 ●武隈黒部市長「対応を考える」 13日、黒部市内で会見した黒部峡谷鉄道の青島郁男総務部長は、来年も猫又駅は途中下車できるとし「降り立った人に楽しんでもらえるよう新たな工夫をしていきたい」と述べた。武隈義一黒部市長は「宿泊客の減少が見込まれる山小屋について、市として対応を考えたい」と話した。 ●知事「一日も早い復旧を」 富山県の新田八朗知事は13日、県庁で会見し、「一日も早い復旧を願いたい」と語った。その上で観光振興に向けて新たな魅力を掘り起こし「市町村をはじめ関係者とワンチームで国内外の観光客をもてなしたい」と意欲を示した。 黒部峡谷鉄道で今季(4~11月)、猫又駅での一般客乗降が解禁されたことについて「ぜひ今後も続けていただけたらありがたい」と期待した。同鉄道を使った訪日外国人数が通年で過去最多となったことや、宇奈月温泉の1~10月の宿泊客数が前年同期比7%増となったことも紹介した。 新田知事は同日、「震災に負けることがないよう、新たな観光ルートである黒部宇奈月キャニオンルートの開始に向け、引き続き関係の皆さまと連携し、準備に万全を期したい」とのコメントも出した。