死刑執行の告知が「当日」の日本…アメリカは「事前告知」がスタンダード「ブラックボックス」の日本の死刑制度の行方は? 死刑囚が国を憲法違反と訴えた裁判 4月15日に判決
国は裁判で “即刻、刑場に連れていく運用でも問題はない”
一方の国側は裁判で、請求を退けるよう求めた上で、「1~2時間前の告知も必要ない=執行当日に即刻、刑場に連れていく運用でも問題はない」という姿勢を示しました。
アメリカでは「事前告知」がスタンダード 1カ月前に告知の州も
判決言い渡しを前に、生命倫理やアメリカ合衆国の死刑制度に詳しい、龍谷大学法学部・古川原明子教授に見解を聞きました。 古川原教授によりますと、アメリカでは、連邦政府が死刑を執行する場合、遅くとも20日前に執行を告知することが規定されているということです。 また州政府が死刑を執行する場合も、遅くても数日前に死刑囚への告知が行われ、約1カ月前に告知する州も多いということです。死刑制度を廃止、または執行停止中の州も増えているといいます。
詳細な執行手続きをホームページで閲覧できる州も
さらに執行に至るプロセスを市民も詳しく知ることができるのが特徴で、たとえばオクラホマ州では、「死刑確定者の執行手続」が州政府のホームページで公開されています。 それによれば、35日前に死刑囚に執行を告知し、「35日前通知書セット」を渡します。そこには ▽前日に面会する人 ▽執行に立ち会う人 ▽最後の食事(上限25ドル) の希望を記入する用紙が含まれていて、死刑囚が執行30日前までに提出することになっています。 また、全米の死刑執行に関する情報を網羅的に収集しホームページで公開している、「死刑情報センター」というNPOもあります。
「適正に執行されているか “疑う” 機会少ない」「執行までの期間は刑罰ではないはず」
記者)Q.アメリカでは、死刑執行までのプロセスを定めたマニュアルに一般の人もアクセスできる状況がある一方、日本はそうした “オープン” な状況にはなっていません。こうした違いが生じている背景には何がありますか? 古川原教授)「アメリカの場合、死刑執行にメディアが立ち会うことも一般的なので、“許されるようなやり方” で人の命を奪っているということを、みんなできちんと確認しようという考え方があると思います。日本の場合はまず、適正に死刑が執行されているかを “疑う” 機会が少ないのかなと思います。知りたくない人も多いとは想像できますが、国が情報を出さないことが許され続けてきたという点があると思います」 Q.国は当日告知の理由を「心情の安定を害さないようにするため」と説明しています。 「早めに教えると、本人がすごく動揺して、もしかしたら自死するかもしれない、刑務官に暴力を振るうかもしれない、他の死刑囚が動揺するかもしれないといった、いろいろな ”不安” を想定しているのだと考えられます。ただ公式に掲げている『告知を受けた死刑囚が、穏やかでいられないからだ』という理由、知らせてほしい死刑囚もいるのに、『いやいや、あなたが落ち込むから教えませんよ』というのは、ある意味非常に ”おせっかい” ですよね。パターナリズムという形で、押しつけがあると思います」 「そもそも死刑は、命を奪うという刑罰なので、執行までの期間は刑罰ではないわけですよね。その期間にたくさん苦しめようとか、なるべく死刑囚がつらくなるように処遇しようとか、そういう考え方は刑罰のあり方からすれば少し違うのではないかと」 Q.国は「執行までの期間に苦しめているわけではない」という姿勢だと思われますが、現状をどう捉えていますか? 「ちゃんと執行するためにやむを得ず拘禁しているという状況なのだから、執行までの期間は、丁寧に死刑囚を人間として扱おうという考え方もあっていいと思うんです。しかし、“執行までもなるべく、同じ社会のメンバーとして扱わないようにしよう” という考え方がかなり根付いて、疑問視しない風潮ができていると感じることがあります」