神戸連覇 天皇杯と2冠 “大迫頼み”から進化 吉田監督「みんなで奪って攻めることをやった結果」
「明治安田J1、神戸3-0湘南」(8日、ノエビアスタジアム神戸) 神戸が3-0で湘南に快勝し、勝ち点72で2連覇を果たした。リーグ連覇は2020、21年に達成した川崎以来で6クラブ目。前半にFW宮代大聖(24)、MF武藤嘉紀(32)が得点して主導権を握り、最終節まで3チームに優勝の可能性があった混戦を制した。11月に天皇杯全日本選手権を制した神戸は、同一シーズンで複数の主要タイトル獲得も初めて。広島はG大阪に1-3で敗れ、2位。J1初参戦の町田は鹿島に1-3で敗れ、3位だった。 青空が映り込んだ銀のシャーレをMF山口主将が高々と掲げると、誰からともなく雄たけびが起きた。長く苦しい38試合を戦い、最後に笑ったのはやはり神戸だった。そして、武藤は空を見上げながら泣いていた。 1点リードの前半43分。1年を締めくくる自身13点目のゴールで追加点を挙げた。直近の東京V戦、柏戦と2試合連続で引き分け、もつれこんだ三つどもえの最終節。「人生で一番長い1週間に感じたし、優勝を逃す悪夢を見て起きるのが2、3回続いた」。常にプレーと言葉で鼓舞し続けた男も、連覇のプレッシャーに押しつぶされそうだった。しかし、ここぞの強さを背中で示した。 前節の柏戦後「甘さが出ている。大事な一戦で試合に入り切れていない」とチームに向けて厳しい言葉を口にした。それでも、この1週間は「今まではプレッシャーのある言葉を若い選手とかに言ってきたが、この1週間はポジティブになれる言葉がけを意識した」と、前向きに戦いへと導くマインドを植え付けた。 全員が闘志の塊となってぶつかった一戦は、宮代の先制ゴールで幕を開けた。前半26分、武藤のシュートがゴールポストで跳ね返り、こぼれた球を好位置にいた宮代が蹴り込んだ。天皇杯決勝に続くV弾に「天皇杯と一緒で、誰でも決められるゴールだった。でもうれしい」と照れ笑いを浮かべた。 今季川崎から加入し、武藤や大迫とFWのポジションで戦うことでブレークした。「サコ(大迫)君やヨッチ(武藤)君にかなわない。もっとチームに欠かせない選手になりたい。味方に点を取らせる余裕があれば成長できるかな」と常に向上心を持ち続けてきた。 昨年は得点王の大迫が22得点で引っ張り初優勝。今年はチームトップ13得点の武藤に11得点の大迫と宮代、5得点のFW佐々木と続く。大迫が他チームにマークされる中、まんべんなくゴールが生まれたのは底上げのたまものだった。吉田監督は「今季は苦しい場面でもセットプレーで点を取れた。宮代、武藤、(佐々木)大樹みんなで。それは全員のハードワーク、ボランチの運動量。みんなで奪って攻めることをやった結果」と、掲げ続けた“競争と共存”の結晶をたたえた。