GPIF、投資先企業との対話で一定効果を確認-時価総額増加に寄与
(ブルームバーグ): 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は21日、投資先企業へのエンゲージメント(対話)に関する分析結果を公表した。企業統治など特定の分野では、対話によって企業の時価総額が増加したとの因果関係が得られた。
ESG(環境・社会・企業統治)などの効果測定プロジェクトの第1弾で、GPIFが東京大学エコノミック・コンサルティング社と分析を行った。
投資先の企業価値向上を促すスチュワードシップ活動やESG投資の効果については、世界で共通の見解がなく、米国では政治的な文脈の中で反ESG運動がみられる。世界最大の年金基金であるGPIFが統計的な手法を用いて分析したことで、今後のESG投資の効果を巡る議論に影響を与える可能性がある。
今回の分析は、GPIFが国内株式で運用委託する21ファンドが2017年度から22年度に行った2万6792回の対話記録を用い、異なる10の対話テーマでそれぞれどのような効果があったかを調べた。これほどのファンド数、対話件数について網羅的に分析した先行研究はないという。
このうち「取締役会構成・評価」では、対話を行った企業の時価総額が、対話のなかった企業と比べて平均6%増加した。「ダイバーシティ(多様性)」に関する対話でも、対象企業の時価総額増加につながる結果となった。
一方、「気候変動」をテーマにした対話では、株価純資産倍率(PBR)の改善などがみられたが、時価総額が増加したかどうかは統計処理の条件が整わず適切な分析ができなかった。
GPIFは今回の分析結果を受け、「運用会社のこれまでのエンゲージメントに大きな価値があったことが示された」と公表資料で総括した。24年度中には、効果測定プロジェクトの第2弾として「企業価値・投資収益向上に資するESG要素の研究」を公表する。
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Takashi Umekawa