過去30年でクルマの保有台数は36%増えたのに新車販売は40%減! クルマの需要はあるのに新車が売れないワケ
新車は売れずともクルマを持つ人は増えた
2023年に日本国内で売られた新車は約478万台であった。新型コロナウイルスの影響を受けて、半導体の不足などに悩まされた2022年の約420万台に比べると急速にもち直した。それでも過去最高を記録した1990年の778万台に比べると、2023年の販売実績は約61%に留まる。 【画像】日本だけでなく世界でも売れている! これまでの累計販売台数が世界一の日本車 その推移を少し細かく見ると、1990年代はおおむね600万台を超えたが、2000年以降は550万台前後に下がり、2020年以降は500万台を下まわるようになった。このような経緯により、30年少々を費やして、国内販売台数は約4割減った。 その一方で、クルマの保有台数は、30年ほど前に比べると増えている。1990年の4輪車保有台数は5770万台だったが、2022年は7852万台だ。街なかを走っているクルマの数も減っていない。つまり、保有台数は36%増えたのに、販売台数は約40%減ったのだ。 保有台数と販売台数の推移が相反する理由は、1台のクルマを長く使うようになったからだ。4輪車の平均使用年数(新規登録されてから抹消登録されるまでの年数)は、もっとも保有台数の多い乗用車の場合、1990年は約9年だった。それが2023年には13年を超えて14年に近付いている。クルマの使用年数が1.4倍に長期化した結果、保有台数が増えて販売台数は減る矛盾が生じた。
クルマの品質向上が長寿命化を助長
それならなぜ平均使用年数が1.4倍まで長期化したのか。この背景には、まず車両の耐久性の向上がある。 1990年頃に新車として売られていたクルマは、いまに比べると塗装や樹脂部品から各種メカニズムや装備まで、耐久性が全般的に低かった。たとえば直射日光が当たりやすいインパネの上面などは、平均使用年数の9年を超えた車両になると、ザラザラに荒れたり、はく離を生じたりするることもあった。 しかし、いまのクルマは生産されて10年を経過しても、普通に使っていれば劣化した印象は受けない。たとえば2014年ごろに売られていた先代ヴェゼル、同じく先代エクストレイルなども、現役として十分に通用する。安全装備や運転支援機能などは現行型が優れているが、通常の使用で不都合は感じない。 クルマの値上げも平均使用年数の長期化に影響を与えた。いまのクルマは安全装備や運転支援機能を割安に装着するが、それでも15年ほど前に比べると、同じ車種同士で比べて価格が1.2~1.5倍に高まっている。 その一方で平均所得は伸び悩むから、購入予算が同じであれば、小さなクルマに乗り替える。その結果、軽自動車が新車として売られるクルマの40%近くを占めて、ミニバンやSUVでもコンパクトな車種が売れ筋になった。 ただし、ユーザーによってはサイズを小さくできない場合もある。そのような人達は、耐久性の向上もあり、従来の愛車に車検を取って乗り続ける。所得が伸び悩む状況でクルマの価格が高まり、同時に耐久性も向上すれば、1台の愛車を長く使うのは当然の成り行きだ。 とくに最近は新型コロナウイルスの影響で所得が減ったユーザーも多く、新車の納期も遅延しているから、ますます1台の愛車を長く使う。いい換えれば、以前に比べるとクルマを大切に扱うようになった。 それなのに国は「古いクルマは燃費と環境性能が悪い」と決め付けて、初度登録や届け出から13年を超えると、自動車税や自動車重量税を増税する。「保有台数が増えたのに新車の売れ行きが下がる」事実も、古いクルマの増税が罪悪であることを示している。
TET 編集部