駐日米大使に実業家グラス氏起用へ 長男は日本生活の経験も
トランプ次期米大統領は16日、駐日大使にジョージ・グラス氏を指名する方針を発表した。グラス氏は実業家出身で、第1次トランプ政権(2017~21年)では駐ポルトガル大使を務めた。11月の大統領選では資金集めパーティーを開くなど、トランプ氏を支援。駐日大使への起用は「論功行賞」の側面もある。 【写真で見る】歴代の駐日米大使 トランプ氏は声明で「ジョージは大使職にビジネスの洞察力をもたらし、常に米国第一主義をとるだろう」と述べた。連邦上院で人事が承認されれば、大使として日本に赴任する。 グラス氏は西部オレゴン州のオレゴン大学卒。銀行に勤めた後、1990年に自身で投資銀行を立ち上げた。15年には不動産業にも参入。長年共和党を支援しており、16年大統領選でもトランプ氏を支援した。 米メディアによると、24年9月には西部ユタ州でトランプ氏のために資金集めパーティーを開催。パーティー券は1人1000ドル(約15万円)以上と高額だったが、約500万ドル(約7億7000万円)の収入があったという。 トランプ氏は16日の記者会見で「日本は非常に重要だと考えている」と強調。石破茂首相との早期の首脳会談にも前向きな考えを示した。ただ、トランプ氏は外国製品に対する一律関税の導入を提唱し、日本に対する貿易赤字や円安に不満を表している。安全保障を中心に連携が進み、「かつてない高みに達した」(今年4月の日米首脳共同声明)と評される日米関係に今後、緊張感が増す可能性もある。 こうした中、日本政府は次期大使にトランプ氏とのパイプ役を期待している。過去に大統領首席補佐官や下院議員を務めたエマニュエル大使は米国の政官界に人脈が多く、外交にも積極的に関わった。ただ実業家出身のグラス氏がどこまで実質的な役割を担うかは未知数だ。 グラス氏はポルトガル大使時代、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の第5世代通信規格「5G」の技術導入を巡って、「ポルトガルは同盟・友好国か、経済的パートナーのどちらかを選ばないといけない」と発言。ポルトガル政府が「我々の運命を決めるのは我々自身だ」と反発したこともあった。 グラス氏は、妻メリーさんとの間に3人の息子がいる。信仰心のあついカトリックとして知られる。17年7月に上院外交委員会で駐ポルトガル大使の指名公聴会に臨んだ際には、「長男とその妻は日本で暮らしている」とも話していた。【ワシントン秋山信一】