苦難の末につかんだ春切符 敦賀気比が狙う8年ぶりの頂点 センバツ出場校紹介
敦賀気比(福井)は3年連続10回目の出場となる。2022年秋の北信越大会で準優勝した実績などが評価された。昨秋の北信越大会は決勝で延長十三回タイブレークの末に惜敗。3連覇を逃したが、そこに至る道のりも苦難の連続だった。準々決勝は最大5点差を逆転勝ち。チームの中心として期待された昨夏の甲子園メンバーが打撃面で思うような結果を残せず、東哲平監督は「当時のチーム状況で、よく決勝までたどりつけた」と話す。
コロナで実戦経験不足も
昨秋の北信越大会では3年連続の優勝を逃したものの、準々決勝では八回から5点差を逆転するなど粘り強さを発揮した。夏の選手権3回戦進出で新チーム始動が遅れた上、秋季福井県大会は1、2回戦が相手校の新型コロナウイルス感染の影響で不戦勝。実戦経験が不足する中での準優勝に、東監督は「不安しかなかったが、よくやった」と選手をたたえる。
県大会、北信越大会を通じて失策はわずか1。エース右腕の辻晶太(2年)は制球が良く、無駄な走者を出さない。最速138キロがさらに伸びれば投球の幅も広がりそうだ。桶谷司(2年)、田中悠希矢(2年)も昨秋経験を積み、継投に不安はない。
光る堅守、投手層厚く
守備は7試合で1失策と、甲子園常連校らしく鍛えられている。昨秋の北信越大会準々決勝では、相手二遊間の守備が甘いとみてセンター返しを徹底し、敵失を誘って逆転につなげるなど、抜け目ない攻撃も見せた。 打線は、旧チームから主力の浜野孝教(2年)、高見澤郁魅(2年)らが上位から中軸を固め、昨秋は下位の柏木勇樹(2年)、西口友翔(1年)らが勝負強さを発揮した。
グラウンドが雪に覆われる冬場、選手たちは複数の室内練習場でウエートトレーニングや振り込みを繰り返す。高見澤は広角に打ち分ける打撃が持ち味だが、スイングスピードも155キロとチームトップレベルだ。「体を大きくしてさらに飛距離を伸ばしたい」と闘志を燃やす。 打線がつながらないなど、昨秋は実力を出し切れない部分もあった。経験不足だったチームの伸びしろとも言え、東監督は「もう少しやれるチーム。冬のトレーニングでよくなる期待がある」と話す。まずは2年連続で敗れた1回戦の突破に集中していく。
OBにレッドソックスの吉田正尚ら
1986年に創立された共学の私立校。88年に付属中学を設立し、福井県で初めての併設型中高一貫校となった。普通科のみで特別進学コース、進学コース、教養コースがある。校訓は「時習・自律・慈愛」。 硬式野球部は学校創立の86年創部。2015年センバツで北陸勢として初の全国制覇を果たした。吉田正尚選手(レッドソックス)や山崎颯一郎投手(オリックス)、西川龍馬選手(広島)ら野球界で活躍するOBを多数輩出している。駅伝部や男子硬式テニス部、レスリング部も全国レベルの強豪。