『名探偵ピカチュウ』が発展させた原作ゲームの世界 大谷育江らおなじみの声優陣も
原作ゲームを発展させたシナリオ
『名探偵ピカチュウ』は、2016年に配信が開始されたニンテンドー3DS版のソフト『名探偵ピカチュウ~新コンビ誕生~』を原作としている。多くの人にはあまりなじみがないであろうスピンオフゲームの1つだが、映画のシナリオはこのゲームのメインクエストに則っているのだ。先述した「おっさんピカチュウ」も、このゲームの設定から取られている。 一方、ストーリーはというと、映画ではポケモンを凶暴化させる謎の薬「R」の真相と、ティムの父ハリーの失踪が1つのストーリーとして語られる。しかしゲームでは、「R」の事件解決後もハリーは依然として行方が知れない。ピカチュウの記憶も戻らないままで、ティムはピカチュウとともに父を探しつづけることを決意してゲームは終了する。ゲームについては、続編の可能性も考慮してそういったエンディングになった(映画公開後の2023年に続編『帰ってきた 名探偵ピカチュウ』が発売された)のだろうが、それを1つの映画作品にするには、しっかりとした結末が必要だ。ゲームにはない映画オリジナルのエンディングは、非常に完成度の高いものと言えるだろう。
豪華吹き替え声優陣にも注目
本作で主人公・ティムの吹き替えを担当したのは、ドラマ『ブラックペアン』(TBS系)や『君と世界が終わる日に』(日本テレビ・Hulu)などで知られている竹内涼真だ。彼は映画本編にもカメオ出演しているので、そのシーンにも注目してほしい。アニメ版の主人公サトシを彷彿とさせる衣装も楽しい1シーンとなっている。ルーシーの吹き替えは、映画公開当時、テレビドラマ等に多数出演し始めていた飯豊まりえ。2016年には月9ドラマ『好きな人がいること』(フジテレビ系)に出演し、2017年には映画『暗黒女子』で主演を務め、2018年には『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)と、多数の映画・ドラマに出演し、まさに波に乗りはじめた時期だったといえるだろう。そして忘れてはいけないのが、ハリーの警察官時代の相棒ヒデ・ヨシダ警部補役の渡辺謙だ。彼はハリウッドでの出演作の日本語吹き替えは自ら担当することで知られており、『名探偵ピカチュウ』も例外ではない。 また、ティム以外の人間に聞こえるピカチュウの声はアニメ版と同じ大谷育江で、ムサシ役の林原めぐみや、ニャース役の犬山イヌコなど、アニメでおなじみの声優陣もほんの少し吹き替えに参加している。後者2人はアニメ版と全く違った役なので、ぜひ見つけてほしい。 幅広い世代に愛される『ポケモン』の実写映画として、高い完成度を見せ、観客を魅了した『名探偵ピカチュウ』。ポケモンたちは愛らしさとともに現実味のある姿で描かれ、彼らは本当に存在するのではないかと錯覚させられるほどだ。街にあふれるポケモンたちはもちろん、謎の薬「R」を巡る陰謀、そして「おっさんピカチュウ」の活躍を楽しめるだろう。
瀧川かおり