サンバイオの脳細胞薬、厚労省部会で「差し戻し」の"激震"
サンバイオが世界初承認を狙う慢性期外傷性脳損傷治療薬「SB623(アクーゴ)」をめぐって、同社株は乱高下している(撮影:梅谷秀司)
創薬ベンチャーのサンバイオ(4592)が“激震”に見舞われている。 3月25日に開かれた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の再生医療等製品・生物由来技術部会(以下、専門部会)。サンバイオの脳疾患治療薬「SB623」(発売後の製品名「アクーゴ脳内移植用注」)の承認に当たって事実上の前提条件を議論する場だったが、その審議結果はサンバイオにとって文字どおり衝撃的な内容となった。 一言でいえば、「アクーゴ」の承認審査の「差し戻し」だからだ。厚労省のリリースを意訳して解説すると、以下のとおり。 ● 有効性と安全性の観点からは、臨床現場に提供する(承認・実用化の)意義はある● ただし、現時点のデータからは治験(承認申請に使用した臨床試験段階の)製品と(審議過程にある現時点で提供されている)本品とが同等・同質だとは判断できない● したがって、今後追加データを提出すれば、改めてPMDA(医薬品医療機器総合機構、厚生労働省所管の独立行政法人)で承認審査し、その後でこの専門部会で承認可否を審査するこれでサンバイオが最後まで粘った3月中の「アクーゴ」承認取得の目は消えた。ただでさえ遅れてきた承認がさらに遅れることは避けられない。 厚労省や専門部会の外部専門家たちが要求する条件(追加データ)が具体的にはわからないが、最悪のケースでは、サンバイオが同等性・同質性について納得できる新たなデータを得るための試験や、細胞の生産などのやり直しをする必要が発生し、年単位の時間がかかることもありうる。 財務的にも苦戦するサンバイオにとって、まさに「悪夢」のシナリオが降りかかってきた、といっても過言ではない。株式市場では翌26日、ストップ安気配で値がつかない状態が続き、大引けの15時ちょうどに制限値幅いっぱいの前日比100円(16.4%)安となる510円で値がついた。
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大西 富士男