乗務員の「スメルハラスメント」対策進む 夏の到来で本格化
換気や消臭スプレーで車内のニオイ対策をするタクシー運転手
「ピー、業務連絡1。各車に連絡。空車営業中の全車両は、窓を開け車内の空気を入れ換えて下さい。事故防止に努め、気分を転換し、安全運転願います」 車内に突然、電子音が響く。ドライバーは換気を始めた。 「お客様に気持ちよくタクシーを利用していただくために、車内のニオイにも気を付けています」と話すのは、荷見亮太(はすみ・りょうた)さん(24)。タクシー国内大手「国際自動車」に2014年に入社した、社会人2年目の若手ドライバーだ。 荷見さんは見慣れない液体を後部座席などに吹きかけ、サッとタオルで拭く。液体の正体は、2013年11月から約3000台の全車両に配備された同社オリジナルの消臭スプレー「Haccper(ハセッパー)水」。酒に酔った客や、香水の強い客が降りた後などに使用されている。
「ニオイケアを通じておもてなしも向上」
「ホスピタリティドライビング」を掲げる同社は、客からのクレームだけでなく、最近増えた女性ドライバーや新卒のドライバーたちからの要望を受け、「スメルハラスメント」対策を本格化させている。ドライバーたちは乗車前に上司から口臭や体臭をチェックされ、ニオイがあれば着替えや事業所内の風呂に入るよう指導されるという徹底ぶりだ。 全国のタクシードライバーの平均年齢は58.6歳(厚生労働省/2014年賃金構造基本統計調査)。ドライバーには男性が多く、「加齢臭」とは切っても切れない関係がある。同社は4月には、男性用化粧品メーカー「マンダム」の協力を得て「ニオイセミナー」を実施。ドライバーたちはいわゆるおじさんのニオイ「加齢臭」だけではなく、後頭部から発せられる30、40代特有の体臭「ミドル脂臭」についても学んだ。 ここまでくるとなんだかやりすぎのような気もするが、同社広報部によると、ニオイに関するクレームが減り、乗客対応を評価する声が着実に増えているという。同社では「ニオイケアを通じておもてなしも向上するように」と、全社を挙げて対策に取り組んでいる。