「子どもと暮らしたいのは、エゴでしょうか」障害のある母親へ乏しい支援 乳児院に預けざるを得ない女性たち、グループホームは同居想定せず
▽障害者を想定した子育て支援の仕組みが欠落 知的障害や発達障害がある人の出産、子育ては実態が不明な部分が多い。上州水土舎の金谷透理事長は「当事者が育てたくても、自治体を含めて周囲が理解してくれず、乳児院に預けるケースが多いのではないか」と話す。厚生労働省は本年度、支援を巡る課題や、母子保健、児童福祉との連携の好事例の調査に乗り出した。 西南女学院大の杉浦絹子教授(看護学)は「グループホームで暮らしながら働く障害者が増え、出産や育児を希望する人も現れている。女性のケースは氷山の一角で、断念せざるを得ない人はほかにもいる。社会全般で子育て支援が進みつつあるが、障害者を想定した仕組みが欠落しており、現行の支援の枠組みではグループホームでもそれ以外でも希望をかなえるのが難しい。行政も障害福祉と子育て支援の部署間で連携が取れていない場合が多く、制度の見直しと関係職員への研修の双方を進めるべきだ」と指摘している。 ▽取材後記
障害があると、子育てだけではなく、恋愛や結婚でも周囲から厳しい目を向けられる。特別支援学校高等部の学年主任に向けた専門家の調査では、約7割が男女交際を禁止または制限していた。北海道のグループホームでは結婚や同棲を希望する入居者が不妊処置を受けていた。 グループホームの入居者が出産しても、わが子と一緒に帰ることすら難しい。望んでも、子育てできない八方ふさがりの現実がある。障害があると、恋愛も、結婚も、子育ても「できない」と一方的に決め、制限する風潮があると感じている。当たり前のことだが、障害の有無にかかわらず同じ人間だ。当事者の希望にもっと耳を傾けていいのではないだろうか。 今回の取材で、2人の母親はそれぞれわが子への強い愛情と、離れて暮らすつらさを何度も話してくれた。「もし自分が恋愛を止められたり、わが子と一緒に暮らせなかったりしたら」。そう考えずにはいられなかった。