「運動とは無縁」だった80歳、空手道場通い10年で初段習得…きっかけは「健康寿命をのばせれば」
福岡県田川市魚町の敷地光彦さん(80)が、空手道場「沖縄正統空手道遠山流道心館」(田川市)に10年間通い、初段を習得した。同館の石田健親館長によると、80歳代で有段者となるのは珍しく、敷地さんは「黒帯をつける者の責任として、体が動く限り空手を続けたい」と意欲をみせている。(小山田昌人) 【地図】田川市の位置
敷地さんが空手を始めたきっかけは70歳の頃。自宅近くの公園で、散歩に訪れた石田館長から道場に誘われたことだった。「中高時代は卓球部だったけれど、その後は空手どころか、運動とは無縁。健康寿命をのばせればと思った」と、敷地さんは振り返る。
同じ頃、石田館長は高齢者の健康維持に向けた練習方法を考案し、シニア部を創設。敷地さんは初代部員として週1度、道場に通い、手首や足首、肩の可動域を広げる動きを盛り込んだ型の練習を1時間程度繰り返してきた。体が硬く、猫背気味だったものの、すぐに「姿勢が良くなった」と言われるようになった。
級や段へのこだわりはなかったが、2017年4月に初めて「7級」を取得し、とんとん拍子に昇級。記憶力の衰えを感じる中、様々な型を覚えるため、自宅でも自然と体を動かすようになった。腰痛もいつしかなくなり、今年10月の昇段試験で合格した。
敷地さんによると、オーストリアや米国、メキシコなど海外の空手経験者が年に数度、石田館長を訪ねてきており、空手を通じた国際交流も楽しみの一つ。東京で年に1度開かれる合同練習会にも参加しており、旅先で他の流派に触れられることも、道場通いを続ける支えになっているという。
石田館長は「若者とは異なり、高齢者は無理がきかない体になっていることを自覚することが大切。自分にあった空手の動きを覚えて続けてきたからこそ、健康を維持し、昇段できたと思う」と評価する。
敷地さんは「強くなろうと思わず、健康第一に考えて続けてきたので、有段者になれるとは夢にも思わなかった。病気をすることもなく、健康寿命がのびていることを日々、実感している」と喜んだ。