「この本に出合うため5000冊以上読んできた」。名もなき読書家の人生観を変えた、紀里谷和明の本
読書家さんがこの本をInstagramで投稿したところ、フォロワーからも反響があったという。 「ある章で、主人公のひとりが小さい頃の自身と対峙する印象的なシーンがあるのですが、ここで涙したというコメントをいただきました。 そこでは『悩みというのはたいてい“大人の心”と“子供の心”の意見の食い違いからくる』ということが書かれていますが、相談者が“子供の心”に目を向けてみると、幼少期のトラウマや傷があるのです。 読み進めていると、まるで自分が支配人からコーチングを受けているような気になります。心の中でモヤモヤしたことや、悩んでいたことが思い返され、主人公にとっての気付きが、そのまま自分の気付きにもなるのです。これがこの本の魅力ですね」。
5000冊の中で特別に心に刺さった名フレーズ
本書のなかでも、とりわけ読書家さんの心を打つフレーズがある。 「やりたいと思ってしまったこと」が何かを突き詰め、ただそれを行動に移す。迷ったらまた問いかけて、行動する……。人生って、ただ単純にその連続でいいんだ、 紀里谷和明『地平線を追いかけて満員電車を降りてみた』(文響社)より 「これは、夢がなくやりたいことがわからないことに不安を抱える会社員が主人公の話に出てきたフレーズです。 主人公は支配人との対話をしたものの、それが受け入れられず一度劇場から現実世界へ戻されてしまう。その後、彼は自分自身と向き合い、一年後に改めて支配人に会いに行って、自らの気付きを支配人に告げるのです。 夢を持たないといけないとか、何者かにならないといけないというのは勝手な思い込みで、人生は『やりたいと思ってしまったこと』(=心からの衝動)を行動に移すこと。単純にその連続でいい。すごくシンプルな気付きですが、当時の自分にはとても響いたのです」。 読書家さんがこの本を読んだのは、コロナ禍で日本中がステイホームを強いられていた2020年。このフレーズが突き刺さったのは当時の状況も大いに関係している。 「あの頃は仕事もリモートワークが増え、趣味で出場していたフルマラソンの大会も中止になり、心にぽっかりと穴が空いたような気持ちでした。余計なことを考えがちで、これからどうなってしまうんだろう……と不安だったんですよね。そんなときにこのフレーズが自分には突き刺さったんです。 状況的に行きたいところには行けないし、会いたい人にも会えない。でも、読みたいと思った本を読むことはできる。読書という心からの衝動は行動に移すことができたのです。いろいろなことを難しく考えないで、読みたいと思った本をただひたすら読めばいいんだと思ったら、すごく吹っ切れた気分になりました。この本に出会うために今まで読書をしてきたと思うほどの出会いでした」。