カルビー江原社長、脱カリスマ経営で成長し続ける企業へ
カルビーは事業環境の変化に対応し次の成長に向けて踏み出した。先頭に立つのは4月1日付で就任した江原信代表取締役社長兼CEOだ。就任後初の中間決算で2023年度通期業績を売上高、利益とも上方修正。売上高は2980億円を見込み初の3000億円の大台を射程に収めた。伊藤秀二相談役(前社長)が「商社・外資系ビジネスを経験し、私とは違った視点で成長をけん引してくれる」と期待を示した通りの結果を収めた。江原社長は、カルビーの成長基盤を構築した歴代社長の功績に敬意を払いつつ、カリスマ経営者によるトップダウンというガバナンスから全社員が主体的に力を発揮できるマネジメントへの変更に着手した。 ●100年を超え成長し続ける企業へ 次の成長に向け、2030年に向けたカルビーグループ成長戦略と2023~2025年度の変革プラン「Change 2025」を推進。「基盤を固め、次の成長へ走り出し100年を超え成長し続ける企業」の実現を目指す。現在進める、成長戦略は2030年を目標年とし、2023~2025年度を「構造改革期」、2026~2030年度を「再成長期」と位置付ける。成長領域に集中投資し、収益性と成長性が両立する事業ポートフォリオへの転換を図る。「Change 2025」では、国内コア事業の収益力強化とグローバル、新規領域(アグリビジネス・食と健康)での事業展開を強化。国内事業は営業利益成長率をプラス6~8%に設定。海外事業は売上構成比率を30~35%まで高める。新規領域は売上構成比率5%を目指す。 ●アイテム数を削減し最適化へ 江原社長は国内コア事業が直面する構造的課題を、過大なSKU(最小管理単位)数、生産キャパシティーの不足を挙げた上で、現在の年間1300を超えるSKUを「お客さまニーズ起点」で、200から300程度削減。すでに改革に着手しSKUごとに「見える化」し、最適化を図る。 生産キャパシティーは、新工場「せとうち広島工場」が2025年3月期に稼働開始予定。DXを活用し自動化、省力化で生産性向上や労働環境の改善を図り、サステナビリティを重視した次世代型工場の基盤を構築。さらに、茨城県下妻市古沢に新工場を建設。2029年3月期に稼働予定で下妻工場の機能移管など関東圏におけるグループ全体の生産体制を再構築。 ●食と健康領域強化 海外事業は製品の認知拡大の基盤を確立し、売上げの拡大に注力。成長市場である中華圏、北米を中心に経営資源を投下。新規領域のアグリビジネスと食と健康領域では、バレイショの専門性を生かし、生産者との共創で、バレイショ、サツマイモ、豆などの高付加価値素材ビジネスを進める。食と健康の領域は、2023 年4月、グラノーラの D2C販売サービス「Body Granola」を開始。個人の腸内環境を検査し、エビデンスに基づき、一人ひとりの健康状態に適したグラノーラを提供。さらに、10月には生活習慣病患者向け食事コーチングサービスを提供するタウンドクター社に出資し、「食と健康」領域事業を加速する。趣味は「阪神タイガース」で38年ぶりの日本一の余韻にしばし浸りながらも、また走り始める。
日本食糧新聞社