ハリス指名から何を学ぶか(8月25日)
8月24日、米民主党は、大統領候補として、カマラ・ハリス副大統領を正式指名した。もし大統領に当選すれば、米国史上初の女性大統領となる。 ここまでの経緯は劇的だった。民主党の予備選で勝利したバイデン大統領は、6月のテレビ討論で、トランプ前大統領相手に、高齢を印象付ける自滅的なパフォーマンスを演じたことで、バイデンおろしの風が吹きあれた。バイデン氏は立候補を断念し、自らの副大統領のハリス氏を後継に推薦した。 その後、「ハリス旋風」と形容されるブームが起きた。これまで人気がない副大統領といわれたハリス氏が、なぜ急に人気を得ているのかを、不思議に思われる方も多いはずだ。 まず指摘したいのは、米国の副大統領職は、いてもいなくてもいい「盲腸」と形容されるよう地味な仕事であり、大統領より目立たないのが仕事という事実だ。 歴史を振り返っても、副大統領を経験して大統領になった政治家の中で、副大統領時代に人気があった人物はほとんどいない。
ルーズベルトの副大統領だったトルーマン、レーガンの副大統領だったブッシュ(父)、そしてオバマの副大統領だったバイデンは、大統領あるいは大統領候補になって、はじめてその存在と能力が、国民に認知された。 ハリス氏も大統領候補に推薦されてはじめて、自らの魅力を解き放った。米国民は、この夏、はじめてハリス氏のノリのいいダンス、天真爛漫な豪快な笑いを発見した。ネット上では「カマラはやんちゃ(Brat)」というメッセージとともに、その動画がネット上で若者の間に瞬く間に広がった。 さらに米国民は、黒人とインド系の血を引く彼女が、社会のマイノリティが不当に裁かれないようにと検事を志し、州司法長官、上院議員、副大統領という階段を上った半生を再発見した。 彼女の明るさと存在感は、左派と中道派に割れ、共和党に比べてまとまりに欠ける民主党を奇跡のようにまとめた。シカゴの民主党全国大会に集まった党員は、一様に明るく楽しそうだ。