「子ども3人の父親役もこなさなければ」シングルマザーの奮闘は病で崩壊した 原発事故で県外避難、12年後「再建格差」の現実
「土地を離れることで仕事を失うことが多いからです。特に農業や漁業など地域密着型の職業は経済的に完全に崩壊します。これをきっかけに家庭が壊れたり、精神的に不安定になったりする連鎖が起きてしまうのです。広域かつ長期に避難する人の中に、生活困窮者が出ることは海外の移民や難民の研究でも明らかになっています」 ―支援団体は、その中でもひとり親や高齢者、精神疾患のある人たち、いわゆる「災害弱者」と呼ばれる人たちが目立つと指摘しています。 「一般的に災害弱者とされる方々は土地を離れると、これまで受けてきた家族や親戚、地域社会からのサポートを受けられなくなるリスクがあります。遠隔地に行くことで、これまでその人を支えていた柱がボキボキと折れてしまい、避難前は問題が顕在化していなかった人でも生活に関する問題を抱えてしまうのです。他の土地に行くことはすごいダメージだと思いますね」 ―県外避難者の支援の仕組みはどうなっていますか。
「震災から12年が過ぎたいま、行政の助成額は減り、支援態勢は先細りなんです。国や、県外避難者が最も多い福島県の政策も、帰還促進に重点が置かれ始めています。帰還しない人は切り捨てていくという思想が根底にあるように思います」 ―県外避難者にはどんな支援が必要でしょうか。 「避難元自治体の政策はどうしても帰還促進にならざるを得ない部分もあるでしょう。でも避難先に定住したい人もいる。国が避難者の生活復興を支援する必要があります。避難先の自治体や社会福祉協議会と情報を共有し、地域の福祉部門が支援できるような枠組みを提案したいです」