小学生の「推し活」メリット3つと親介入の注意点 理解できなくても「好き」を発見した喜びを共有
推し活が子どもの心に与える「ポジティブな影響」3つ
では、推し活は子どもの心にどのような変化や影響を与えるのだろうか。久保氏によれば、大きく分けて3つの「ポジティブな影響」があるという。 ・自分の世界が広がる ・自分の資源を分け与える喜びを感じられる ・「第三の居場所」ができる 1つ目の「自分の世界が広がる」ことは、推しの情報収集をしたりイベントに赴いたりする中で、同じ関心をもつ他者と親交が深まるきっかけになったり、自分の関心領域が拡大していくことにつながる。久保氏が教授を務める大学でも、自己紹介で「自分の推しは何(誰)です」と話す学生が多いそうだ。アイデンティティ形成の前段階にある小学生にとって、自分らしさや目標を見つける際には、「推し」が自分の輪郭をハッキリさせる材料になるのだろう。 2つ目の「自分の資源を分け与える喜びを感じられる」ことは、人間の文明社会の形成にも関わる。人間は、他の生物に類を見ないほど大規模な社会を形成し、維持することで繁栄してきた。それには他者との協力が不可欠であり、互いの資源を分け合うことが求められる。久保氏によれば、そこに喜びを見出す個体ほど協力関係を築きやすく、結果として子孫を増やしてきたのだろうと考えられる。 「推し活は、自分の資源(時間・お金・能力など)を与えるばかりで、直接的な見返りはないともいえます。しかし、なぜこんなにも楽しいのかというと、分け与えること自体に幸福になれるからです。『他者に資源を与えることに喜びを感じる』のは、人間に生得的に備わる傾向といえます」 一般的に子どもは「お世話される側」であり、資源を与えられる側だ。そんな子どもにとって、推しのためにお小遣いからお金を出し、大切な時間を割くという行為は初めての「与える経験」なのだといえる。 3つ目は、第1の居場所である「家庭=帰るべき場所」と第2の居場所である「学校や職場=出かけて何かをする場所」に次ぐ、「第3の居場所」としての役割だ。 「現代社会の多くの人は『家庭』と『学校や職場』を行き来して生活しています。それとは別に、しがらみや義務がなく本当にくつろげる居場所は、精神的な健康を考えるうえでも非常に大切です。そのような場所は『第3の居場所』とも呼ばれます。 その点、推し活は家族や学校と異なり、たとえ対象が実在するとしても自分の現実世界ではありません。リアルな人間関係を超えたつながりの中で、何かを求められることなく、自分の好きなものにアクセスできる環境は、子どもの心の拠り所になりえるのです」