【ABC特集】定期健診で「A判定(異常なし)」だったのに・・・実は胸のX線写真に“影”が 知らぬまますごした女性は1年後ステージ3のがんに 「1年前、なぜ異変を教えてくれなかったの」と悲痛な訴え
その後、同じ医師の1人が日をおいて再度、読影を実施。このとき初めて、肺の「影」に気づきました。医師はレポートに「右肺尖 結節影の疑い」と記入します。これは、本来であれば「C(要 経過観察)」判定に該当するものでした。 ところが――。医師は「C」判定に修正したつもりが、医療機関のシステムにはロック機能があり、いったんロックがかかると「A」判定のまま上書きできない構造だったのです。2度目の読影による貴重な情報は、反映されないままになってしまいました。
医療機関「法的過失はない」
結果的に、女性に「C(要 経過観察)」という医師の判断は届かず、女性は「A判定」に安心したまま、1年間が経過したのです。 「怒りもありますし、残念で仕方がないと思います。(医師が)気づいていたのに情報が患者に伝わらず、重い疾患になってしまうなんて……」 女性の肺がんは現在、ステージ4の状態といいます。放射線治療や、肺の一部切除手術を受けたうえ、多数の薬を服用して化学療法を続けています。
女性は裁判で「1年間治療の機会を逸し、肺がんの病期が進行した」と訴えています。一方、医療法人は「法的な過失はない」と争う姿勢です。書面によりますと、医療法人の主張はこうです。 医療法人は、医師が2度目の読影をするとは予測しておらず、システムにロックがかかることを前もって医師にまで伝えることは非現実的だった。また、仮に「C判定」という結果が伝わっていても、数か月・年単位の経過観察が続いた可能性が高く、がんが進行しないままで治療を開始できたという根拠はない――。 双方の主張は平行線のまま。医療法人側は「訴訟に関する取材は受けられない」としています。 裁判は、提訴から3年半が過ぎた今もまだ続いていて、抗がん剤の服用に苦しみながら、女性は医療法人の責任を問い続けています。 女性を支える夫は「多くの人が信頼している定期健康診断だが、実は誤った診断結果が伝わっているケースは各地で起きている。医療機関には健診の責任を認識してもらいたいし、こうした事態を、まずは広く知ってもらいたい」と話しています。