「なんで? お金ないの?」友達に言われた衝撃の一言…母子家庭の子どもが直面する“体験格差”のリアル
経済的な理由と時間的な問題で、子どもの“体験”が後回しに…
―子どもたちにさせてあげられていないなと感じることはありますか。 上の子は「こどもちゃれんじをやりたいな」と言っていました。まだ離婚する前に一度やっていたことがあって、それでもう一回やりたいって。でも、払うのが大変ということもあるし、続くかもわからないからと言って、ちょっとやめておこうと。 今は私と一緒に勉強しようと言って、本人も納得してくれてる感じです。でも、相手のことを考える優しい子なので、私を困らせないようにと思って言っていないだけかもしれませんね。本当はいろんな思いがあっても。 学年が上がって、だんだん問題が難しくなってきて、算数でも漢字でも、テストでうっかりミスが出たり、授業だけではまったくわからないことも増えてきているんですね。今はまだ小学生なので、私が自分で教えられる範囲ではあるかなと思って、仕事の昼休憩の時間に本を読んで、勉強の教え方を学んだりしています。 弟は「バスケがやりたい」と言ってましたね。クラスで仲のいい子がバスケをやっていて。あと「スラムダンク」を見てかっこいい、やりたいって。 バスケのクラブは週に2回、平日の夜に学校の体育館でやっているみたいなんですね。 体力が余ってる感じもするので、やらせてあげたいんですけど、経済的な理由と、時間的な問題でできていなくて。 ―お金以外の理由もあるんですね。 4時半に仕事が終わって、スーパーで買い物をしたりして、5時半ぐらいに家に帰ってきて、急いでご飯をつくって食べさせて、練習に連れていって、2時間ぐらいしたらまた迎えに行って、お風呂に入れて……、とやっていると、ちょっと私の体がもたないなと思っています。 親が二人いたら、色々と手分けできるんですけど、一人だとそれができない。全部自分でしなきゃいけないので。 だから、下の子はウズウズしていると思うんですけど、「バスケはちょっと待って」と言っています。もうちょっと大きくなって、次の日の学校の準備とか、自分のことがしっかりできるようになってから、それでもやりたいと言ったらやらせてあげようと思って。 お店で売ってたバスケの小さいゴールを買って、家の壁に取り付けてあげました。今は毎日それで遊んでいます。 ―職場から帰ってきても、家でもずっと別の仕事が続きますよね。学校が終わった後、小西さんが家に帰ってくるまでの間は、子どもたちはどうされていますか。 学校が終わったらそのままほかの子たちと学童に行っています。でも、上の子は今年から定員オーバーで学童に入れなかったんです。同じ家庭の子どもでも、大きい子のほうが保育が必要な度合いが低いということで点数が低くて。だから、家で待っている感じです。 ―お金の優先順位として、子どもの体験にかかるお金と、子どもの勉強や進学にかかるお金とを比べるとどうでしょうか。 やっぱり勉強にかけたほうがいいなと思います。体験のほうは、無料で参加できるイベントに応募している感じです。色々なことを体験するって、子どもの成長にとってはすごく大事なことですよね。でも、今はそれが後回しになってしまっているかもしれません。
〈著者プロフィール〉今井 悠介
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事。1986年生まれ。兵庫県出身。小学生のときに阪神・淡路大震災を経験。学生時代、NPO法人ブレーンヒューマニティーで不登校の子どもの支援や体験活動に携わる。公文教育研究会を経て、東日本大震災を契機に2011年チャンス・フォー・チルドレン設立。6000人以上の生活困窮家庭の子どもの学びを支援。2021年より体験格差解消を目指し「子どもの体験奨学金事業」を立ち上げ、全国展開。本書が初の単著となる。