「痔」の種類と治療法を医師が解説! 知っておきたい基礎知識と注意点もご紹介
日本人の多くが悩んでいるとされる「痔」。しかし、一口に痔といっても色々な種類があり、それぞれの治療法は異なります。今回は痔の種類やそれぞれの治療法、痔のセルフケア法や日常での注意点などについて、「川﨑病院」の川﨑先生に教えていただきました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
そもそも、痔とはどんな疾患? 種類や特徴を医師が解説!
編集部: まず、痔について教えてください。 川﨑先生: 痔とは、肛門や肛門周辺の疾患の総称です。統計によると、日本において痔の症状がある人はだいたい10人に1人とされています。また、検査をして痔が見つかる人は20~50%の確率で存在しているため、決して珍しい疾患ではありません。 編集部: 痔にはどのような種類があるのですか? 川﨑先生: 大きく分けて、痔は以下の3つに分類されます。 いぼ痔(痔核):肛門にいぼ状の腫れができたもの 切れ痔(裂肛):肛門の皮膚が切れたり避けたりした状態 痔ろう:肛門の内部が化膿して、肛門の内と外がトンネルでつながった状態 編集部: そのなかで、最も多い痔は? 川﨑先生: 最も頻度が高いのは、いぼ痔です。歯状線という直腸の粘膜と皮膚の境目よりも上(内側)の、粘膜の部分にできるものを「内痔核(ないじかく)」、それより下(外側)にできるものを「外痔核(がいじかく)」と言います。 歯状線よりも上の部分は痛みを感じにくいため、一般には外痔核の方が痛みを伴うことが多いとされています。 編集部: どこにいぼ状の腫れができるかによって症状が違うのですね。 川﨑先生: はい。現在、日本人で最も多いのはいぼ痔ですが、そのなかでも内痔核は一番多いタイプです。内痔核は痛みなどの自覚症状がほとんどないので、出血をして初めて自覚するケースも少なくありません。
痔の原因と治療法
編集部: 痔の原因はなんですか? 川﨑先生: 便秘や下痢、排便時のいきみが主な原因です。また、座りっぱなしの姿勢が続くと下半身の血行が悪くなって、いぼ痔ができやすくなります。加えて、重いものを持つことが多い人や、辛いものをよく食べる人なども痔になりやすいとされています。 編集部: どのように痔を治療するのですか? 川﨑先生: 痔のタイプや症状によって異なりますが、多くの場合、塗り薬や座薬を使用して治療します。例えば、患者数が最も多いいぼ痔の内痔核では、進行度で4段階に分けられます。 最も軽度なⅠ度であれば出血することはあっても肛門からいぼが出てくることはなく、この場合には生活習慣の改善や座薬、軟膏などで治療します。ただし、あくまで対症療法なので、治るわけではない点はご留意ください。 編集部: 症状が進むとどうなるのですか? 川﨑先生: Ⅱ度になるといぼが大きくなり、排便時に肛門から出てきて、排便後は引っ込むという状態になります。 この場合には座薬や軟膏に加えて、いぼの血流を止めて壊死させる「ゴム輪結紮療法(けっさつりょうほう)」や、いぼ痔を小さくする効果が期待できる「硬化療法(注射)」をおこなうこともあります。 編集部: さらに進行すると? 川﨑先生: いぼが肛門の外に出てきて指で押さないと戻らない、あるいは指で押しても戻らない状態をそれぞれⅢ度、Ⅳ度と言いますが、この場合には手術でいぼを切除する場合があります。 編集部: 薬で根治することはできるのですか? 川﨑先生: いいえ、痔の種類によっては薬では治らない場合もあります。痔は自然に治癒することがなく、塗り薬や座薬を使うことで症状を落ちつかせることはできたとしても、ほとんどが対症療法であり、薬で治らない場合には手術が必要になります。 編集部: 症状によって治療法を選択する必要があるのですね。 川﨑先生: はい。痔のタイプによっても治療法は異なり、痔ろうなら切除する根治術が必要になります。 また、慢性的に切れ痔を繰り返すことで周囲の皮膚が荒れて膨らむことを「見張りいぼ」と言い、場合によっては手術で切除することもあります。それから、肛門が硬くなり、狭くなった場合には切除して広げることもあります。