最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
リチウムイオンバッテリーはどう作られるのか
EVで最も重要なのは、間違いなくバッテリーだ。1800年代に初めて考案されたものの、リチウムイオンバッテリーが最初に商業化されたのは1991年(ソニー)と、まだ比較的新しい技術と言える。 【写真】新世代の小型車向けプラットフォームを採用【ルノー5 Eテックを写真で見る】 (21枚) そしてもう1つ、我々はリチウムイオンバッテリーについて紛らわしい名称をよく耳にするが、これらはいったいどのように異なるのだろうか? 例えば、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーはリチウムイオンバッテリーなのか、それとも別のものなのか? さまざまな呼ばれ方をしているが、これらはすべてリチウムイオンバッテリーであり、基本的な構成要素やその働きは同じである。 EVの駆動用バッテリーは何百ものセルで構成され、それぞれが数ボルトずつ発生し、走行に必要なエネルギーを供給する。セルはすべてケーシングにまとめられている。 各セルには正極と負極の2つの電極がある。その間にプラスチックやセラミックでできた非導電性のセパレーターと、薄い電解液の層がある。 セルは、板状のチューイングガムのように薄くて平らなものもあれば、丸めて円筒形や角柱形にしたものもあるが、いずれも上記の4つの要素を含んでいる。 大きな違いは、正極の配合だ。最も一般的なのは、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)とリン酸鉄リチウム(LFP)の2つのタイプだ。 どちらの名称も、正極を作るために使われる化学物質の混合を表している。負極は常に炭素系で、通常はグラファイトから作られる。 正極は化学物質をペースト状に混合して作られ、バッテリー業界ではこれをケーキ作りに例えることもある。実際には、リチウムイオンバッテリーセルに使用される材料は、見せ物のケーキよりも少ない。 正極は、化学物質を混ぜてペースト状にしたものをアルミ箔に塗り、乾燥させて作られる。炭素負極は、グラファイトのペーストを銅箔に塗ったものだ。配合が異なれば、バッテリーの特性も異なる。 NMCバッテリーは、より多くのエネルギーを蓄えてEVの航続距離を伸ばすことができる。コバルトは出力密度に優れているが、コストや採掘など課題も多い。LFPバッテリーには高価なニッケルやコバルトはおらず安価で、安定性も高い。 ただし、基本的な機能はどれも同じだ。充電中、正極のリチウムイオンは電解液とセパレーターを通って炭素負極に移動する。バッテリーを使用して放電すると、イオンは正極に戻る。 もし、あなたがEVの購入を検討していて、持続可能性を重視するなら、ニッケルやコバルトといった重金属を含まないバッテリーの方が、間違いなく環境面で優れている。 しかし、日々重要なのは航続距離や充電速度といった性能の数値であり、バッテリーの化学物質ではない。自動車メーカーがどのような方法でEVを生産・販売しているかは、おそらく大半の人は心配する必要はないだろう。
ジェシ・クロス(執筆) 林汰久也(翻訳)