創業115年の龍名館ホテル 全室スイートルームへ一新させた理由
東京・千代田区にある『ホテル龍名館お茶の水』が8月1日、リニューアルオープンした。1899年に旅館として創業した同ホテルは今年で115年目という老舗。驚くべきは、これまでは1泊6000円程度の“ビジネス旅館”だったが、今回のリニューアルで1泊5万円台のスイートルームへと変貌を遂げている。虎ノ門ヒルズのアンダーズ東京をはじめ、外資系ホテルの参入で激戦を極める都内のホテルで龍名館の目指すホテル運営とはーー。
12室あった“ビジネス旅館”が今回のリニューアルで9室と部屋数を削減させた『ホテル龍名館お茶の水』。その代わり、価格は約9倍に高騰している。その理由について、取締役で経営企画・マーケティング部長の濱田裕章氏は「12室しかなくて、1室6000円で営業していてもビジネス的には小さい。お茶の水は創業の地。ここでブランディングするかを考え、今回のリニューアルとなった」と説明する。 実は、築40年のこの建物は、10年~15年後にはビル自体の建て替えが必要となってくる。「例えば、あと10年をどう過ごすか、このホテルのイメージを変えるために、できる限りのことをやりたかった」(濱田氏)と、全室スイートルームのホテルへと、イメージを一変させることを決めた。
龍名館ホテルは、創業したお茶の水の他に、東京駅にも分館を構える。1963年に『ホテル八重洲龍名館』をオープンしたが2007年にその看板を一旦下ろし、『ホテル龍名館東京』として2009年にリニューアルオープンさせた。日本らしい旅情感を表現したホテルは外国人観光客からも好評で、また好立地もあり稼働率は90%を超える(都内の平均は85%)。さらに、ミシュランなどでも高い評価を受けている。その流れがあり「東京駅の評価をいただいているので、創業の地として胸を晴れるものにしたい」(濱田氏)と、お茶の水を一新させた。 築40年の建物であることから、配管などの関係でバリアフリーを提供することはできなかった。 靴を脱がせてあがる客室。浴室へも段差がある部屋もある。それでも、見た目の洗練さは、旅館時代とは当然のことながら激変しており、高級感と京都とは異なる“和”の風情を漂わせている。 2020年に開催される東京五輪。それに合わせ、都内のホテルは外資の激戦を極めている。しかし「富裕層をターゲットにした超高級のホテルではなく、独立系でやっている。他のホテルをライバル視するという意識はなく、あくまで自分たちが提供できる価値を考えて経営しています。ここ(お茶の水)の建て替えも10年~15年後。東京五輪に合わせて、は考えていない」と濱田氏は、あくまでマイペースを貫き、龍名館ならではの価値を提供し続けていく。