6年ぶり世界再挑戦失敗の黒田雅之が流した「血の涙」
プロボクシングのIBF世界フライ級タイトルマッチが13日、後楽園ホールで行われ、挑戦者の同級4位、黒田雅之(32、川崎新田)が同級王者のモルティ・ムザラネ(36、南アフリカ)に0-3の判定で敗れた。黒田はボディ攻撃を頼みに最後まで前に出たが、王者の技術は一枚も二枚も上手で6年ぶりの世界再挑戦は失敗した。日本人の世界挑戦は、これで7連敗。令和の新世界王者第1号の誕生はまた“お預け”となった。
王者を驚かせた序盤戦
黒田のスタートダッシュはチャンピオン陣営を驚かせた。 ジャッジのうち2人が4ラウンドを終えて39-37で黒田を支持した(1人は38-38)。体格差を存分に生かした作戦がはまった。遠い距離からのジャブ、左ボディ、ときおり大きな左フックをガードの上から打って見せる。ダメージブローはなかったが、黒田のペースだった。 ムザラネ陣営は、そのインターバル中に意見を交換したが、「黒田が取っているんじゃないか」という声があって緊迫したという。 「正直、試合前は簡単な相手だと思っていた。ここまでやるとは」 慌てた陣営はラウンド開始前に指令を出す。 「もっとプレッシャーをかけろ!」 そこから流れが反転した。 ムザラネの手数が増える。とにかく距離をつめ左を当てることに終始してきた。スピードある左をインサイドから小さく。そして的確に。左が当たり始めると次はワンツー。その右から、また左と黒田にとって嫌なパターンの連打に圧倒され、右目の周りがどんどん腫れはじめた。 「2、3回から右目がぼやっと見づらくなって距離感がつかみにくくなっていた」と黒田は言う。 5回には左目の上もカット、流血した。 内側からババババと打って、パンチを受ける時間帯には、鉄壁のブロック。36歳の王者は、そうやって消耗戦の中でスタミナロスを最小限にしていく。黒田は、前へ前へと出るが、ボディ以外は、ほとんどブロックされて当たらない。序盤は手数とボディがジャッジに支持されていたが、ムザラネの左右の効果打が目立ち始めると「9-10」のラウンドが積み重なっていく。 「左を潰そうと思ったが、想定していたより左が拳ひとつ分伸びてきた」 頭の位置を右下、左下へ、しゃがみ込むようにして移動させるだけで、ずいぶんと違ったのだろうが、攻める方にばかり気がいって、ポジショニングが甘くなり、左をもらい続けたのである。 「もっと一発一発打ってくると思ったので正面に立った。戦術的には彼のほうが細かく、僕がやりたいことをやってきた」 頼みはボディだった。 「お互いにおじさん。ボディは当たっていたし後半になってボディが効いて落ちてくれるかなと思ったが、何年も負けていないだけのことはある。僕は下手なので我慢比べにもっていくしかなかった」 ボディは当たっていたが、ムザラネのペースはいっこうに落ちる気配はない。大晦日にマカオで開催された坂本とのV1戦のときもそうだった。