「060」導入で「090は古臭い」のか? かつて携帯電話の番号が「古ければ古いほどイケてる」とされた理由
070は安いPHS
1999年に携帯電話の番号は11ケタに変わった。それまで「030-」だった人は「090-3」に変わった。「3」の人々は「私は随分昔から携帯電話を持っていたんだよ! この番号は絶対に手放さない!」なんてことを言っていた。 それだけ最古参の「3」は憧れの番号だったし「譲ってくださいよ~」なんて言う人もいたほどである。つまり、今と逆なのだ。今は「古臭い」と言われる「090」で、さらにその中でも最古参の「3」は一番化石じみた存在になっているのだが、2000年代前半は「090-3」が一番イケていたのである。 そのほかにもイケていたのは「2」「4」「8」である。2000年に携帯電話をようやく購入した私は「9」だったが、当時はバカにされた。さらに言うと、現在「080」があるが、これは新しいものであるのに加え、会社から与えられる携帯電話といった側面もあったためバカにされていた。 「070」については元々「安い携帯電話」であるPHSの番号だったため、その番号が書かれた名刺を出すと「ケッ」と思われることもあった。こうした無駄な「電話番号マウンティング」が2000年代前半には存在したのである。
「090」はまともな人の証?
しかし、今は携帯電話でも「070」があるし、そして今後、「060」も登場する。かつて「070」がバカにされていた時代を知らない世代が多くなったということであろう。というか、いちいち電話番号でマウントを取っていたというのはかなり意味不明ではなかろうか。そして現在、「090」を時代遅れ扱いするのも意味不明である。 ただし、東京の場合「03」がないのが評価を高めることもある。町中華の店の軒先に「xxx-yyyy」という7ケタの番号が書かれているのを見たことがある人もいるだろう。元々東京の場合、「03-xxx-yyyy」といった形の9ケタだったが、1991年に「03-3xxx-yyyy」となった。 つまり、7ケタの番号を記している店は1991年以前から存在している店で、「老舗」であるということを意味するのである。これは「古臭い」どころではなく、33年間潰れていない名店であることを意味する。 今回の「060」をめぐる「090は古臭い」騒動もそうだが、今、「090」を維持している人はそこそこ携帯電話代金を踏み倒すようなことをしなかったまともな人、という意味合いもあるのである。 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) 1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。 デイリー新潮編集部
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