具志堅用高の記録に挑む鉄女ボクサー
「WBC世界アトム級タイトルマッチ」(11月14日 後楽園ホール) ■次戦で勝てば日本記録に王手 [写真・記事]モデルボクサー 43秒でTKOでも場内からヤジも 元WBA世界ライトフライ級王者、具志堅用高の作った世界王座13度連続防衛の日本記録に王手をかけようとしている女子ボクサーがいることをご存知だろうか。WBC世界アトム級王者の小関桃(青木ジム)である。 サッカー少女から10代でボクシングに転身。アマチュアで全日本タイトルを獲得するなど経験を積み、日本で女子のプロが認可されていない07年にタイで世界挑戦を2度。08年にJBCが認可した第1回の女子プロテストには不合格という波乱の旅立ちだったが、08年に世界王者になると、以降、無敗のまま11度の防衛を続けてきた。14日に後楽園ホールで指名試合としてランキング1位のノラ・カルドサ(メキシコ)と対戦するが、このV12戦に成功すれば、いよいよ日本記録に王手である。 「負けたら、そこで終わりなんです。世界戦にはお金もかかります。女子ボクシングはまだまだ注目も薄いですから。もうボクシングはできないでしょう。だから防衛記録のことなんか考えている余裕ってないんです。それに具志堅さんの記録と、私の記録を並べること自体に無理があると思います。男女のボクシングの選手層、レベル、歴史、そのすべてにおいて違いますから。正直、その話を聞かれるのは嫌なんですよ」 ■偉大な先人のモノマネをしていた過去も 伏し目がちの目で小関は謙虚に言葉を選んだ。具志堅の現役時代の映像はネットで拾い上げた。 「同じサウスポーですし、気になって何度か見ました。技術ももちろんですが、闘争心が凄い。倒れているボクサーに食らいつくのを見た」 実は……と小関が言う。 「私って学生の頃、余興でアフロのカツラをかぶって具志堅さんの物真似をしてたんです」 いつか具志堅の記録に並ぼうとする日が来るとは思ってもみなかったのだろう。 小関の武器は、スタミナだ。サウスポースタイルから頭を低くしてガツガツとインファイトを仕掛けることもできるし、絶妙のガードのテクニックで被弾を避けながら左のカウンターを拾うというボクシングもできる。一発KOの派手さはないが、無尽蔵のスタミナを生かした、賢明でひたむきなボクシングである。