「絶対音感」がなくても正しい音程で歌えるのはなぜか? 意外な理由が明らかに
人間が音楽を記憶し再現する方法を心理学者が解説
人が歌を思い出す能力について調べた先行研究では、被験者に記憶から思い起こした歌を歌ってもらった。このような状況でも、6人に1人が正しい音程を選び、うまく歌うことができた。この結果をさらに突き詰めるため、今回の実験では、耳にこびりついて離れない曲を使い、音程に合わせて歌うことが無意識のうちに行われるのか、意識的な努力が必要なのかを分析した。 曲が脳に残っている時は、少なくとも頭の中で繰り返し再生されている部分については、メロディの感覚がよくつかめていることになる。しかし、こうした頭の中で繰り返される曲を、すべての人が正しい音程で覚えていると言える証拠はなかった。 今回の研究を行ったニコラス・ダビデンコ心理学教授は次のように説明する。「記憶を研究する学者は、長期記憶について、脳が情報を表現するために近道をするような、何かの要点をとらえるものだと考えることが多い。人間の脳が音楽の要点を表現しようとする1つの方法は、元の音程が何であったかを忘れてしまうことだろう」。これを踏まえると、今回の実験の被験者は音楽家ではなかったにもかかわらず、曲の旋律だけでなく正しい音程も記憶していたことは、驚くべき結果だった。 私たちが音楽を正しく記憶し、再現する方法については、まだ解明されていないことがたくさんある。今回の実験の参加者はごく少数だったが、エバンス博士候補は今後も研究を進める意欲を示している。同博士候補は、今回明らかになった結果によって、人々が歌うことを恥ずかしがらなくなるよう望んでいる。「音楽を奏でるために、ビヨンセである必要はない。あなたの脳は、できないと思っている部分があるにもかかわらず、すでにその一部を無意識のうちに、正確に行っているのだ」
Eva Amsen