落語作家・ナツノカモ「いつか再読する日のために大切にしている蔵書」から厳選した3冊(レビュー)
木田元『反哲学入門』を再読した理由は、初読の時によく分からなかったからだ。再読の喜びには、あの頃「分からなかったことが分かるようになる」ことが含まれる。 哲学史をニーチェ以前と以後に分け、以後を「反哲学」とする著者の試みは、今回とんでもなく面白く読めた。様々な哲学者たちの思索が解説されているのだが、「なぜ彼がそう考えるに至ったか」が著者の憶測も交えて細かく書かれており、そのことに初読時点では気づかなかった。 ――インセスト・タブーに対するこうした反撥が心理的動機として働いて、ニーチェは西洋の文化形成の総体を批判的に見るような壮大な歴史的視野を開きえたのではないかと思っています。 哲学者というどこか遠くに感じる存在を著者が手ほどきしてくれる本であり、考えることの喜びを味わえる名著だ。 今回、再読した三冊を僕はまた本棚に大切に戻した。再再読の日が来たら、今度はどんな「心持ち」になれるだろうか。 ※[私の好きな新潮文庫]いつか再読する日のために――ナツノカモ 「波」2024年2月号より [レビュアー]ナツノカモ(落語作家) 協力:新潮社 新潮社 波 Book Bang編集部 新潮社
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