ふるさと納税で福岡県春日市が大苦戦 起死回生へ寄付額を"値下げ"
住民税控除額が寄付を上回る
苦境を脱しようと必死の春日市ですが、当初は返礼品のランキング上位に入る人気自治体でした。市がポータルサイトを導入した16年の寄付額は約7億円で県内3位でした。17年は約8億9000万円、18年には約12億5000万円と順調に伸びていきましたが、19年から風向きが変わります。 返礼品を巡る競争が過熱し、ギフト券を用意する自治体も現れました。総務省は、返礼品を地場産品に限定するなどルールの厳格化を進めました。春日市では、市内の卸業者が扱う県内産のフルーツ盛り合わせが人気でしたが、産地の規制でラインアップできなくなり、同年の寄付額は約7億1000万円に減少しました。
20年は約5億3000万円、21年は約5億1000万円、22年は約3億8000万円と減少は続きます。広告に予算を充てる余裕もなくなる一方、他の市町村に対する春日市民のふるさと納税により、住民税の控除額は年々増えています。 寄付受け入れ額から住民税控除額を差し引くと赤字の状態が続いており、この危機感が、窮状を"逆手"にとって注目を集めるPR大作戦につながりました。
知恵を絞り「らしい」返礼品を
20年の国勢調査によると、福岡市のベッドタウンとして発展してきた春日市の人口は約11万人で県内で6番目です。市域の90%近くが住宅地で、田畑は2%、工業用地は1%未満と、地域のオリジナル品が生まれにくい土地柄ともいえます。市はそれでも「春日らしい」特産品の”開発”に力を入れています。 春日市と隣接の那珂川市には、JR西日本の新幹線車両基地があります。春日市が返礼品として9月に基地の見学ツアー(寄付額10万円)を企画したところ、9件の申し込みがありました。
また、市内の工場で製造した500系新幹線の車体番号プレートの模型や、新幹線のイラストが描かれたコースター、ドクターイエローをデザインしたカステラなども開発しました。 宮脇さんは「市内の事業者にも頑張ってもらい、魅力的な返礼品を用意しています。春日市が好きという方にぜひ応援してほしい」と呼びかけています。
読売新聞