カビが潜むキッチンの意外な場所とは、対策のコツを専門家が伝授 特に注意すべき場所も
カビの発生を防ぐには
キッチンを清潔で乾燥した状態に保つだけで、ほとんどのカビの増殖は避けられる。 「ポイントは湿度を低く保つことです。原則として、カビは乾燥した表面には生えないからです」とペッチア氏は説明する。結露に注意し、こぼしたり漏れたりした液体を拭き取り、表面のほこりやごみを取り除く。特に湿気の多い地域の家庭では、除湿機やエアコンを使うと良いという。 冷蔵庫などの表面を掃除する頻度についての明確な推奨はないが、シャフナー氏は、一般的には1~2週間に1回程度が良いと言う。 タオルやスポンジについては、水を含んだ状態で放置せず、頻繁に取り替えることが最も重要だ。シャフナー氏は「使用後のスポンジはすすいで絞り、乾かしましょう」と言う。もっと手早く除菌したいときは? 2009年に学術誌「Food Control」に発表された、スポンジを食器と一緒に食洗機に入れて洗うか(ただし食洗機可の場合)、水をはった耐熱容器にスポンジを入れて電子レンジにかける方法を氏は勧めている。
カビを見つけたらどうすべき?
どんなに気をつけていても、カビが生えてしまうことはある。不審な斑点に気づいたらどうすればよいのだろうか? 食品衛生の専門家は、基本的には、ブリーチーズ(白い皮のソフトチーズ)、ヨーグルト、フムス(ひよこ豆をペースト状にした中東のペースト)、ベリー類などの水分の多い食品にカビが生えたら全部捨てるよう勧めている。ハードチーズやニンジンなどの密度の高い乾燥した食品は、カビが生えている部分プラス3センチほど切り落とせば安全だという。 シャフナー氏は、調理台や冷蔵庫の棚などの表面にカビが生えたときには、洗剤と水で掃除してから漂白剤で消毒するように勧める。特に、漂白剤は非常に効果的な除菌剤だが、その前に大小の汚れの粒子を落としておかなければならないと強調する。「汚れた表面を消毒することはできません」 カビの除去は戦いの半分に過ぎない。カビがあるところには湿気があり、湿気があるところではカビが増えるからだ。ペッチア氏は「カビを除去するのは病気の症状を治しているのと同じで、病気の原因を治療しているわけではないのです」と言う。氏は、水漏れ、腐りかけの食品、冷蔵庫のパッキンの破損など、カビの原因を特定し、それを解決することを勧める。 カビは通常、ずっと生えているのでなければ問題にはならないとシャフナー氏は言う。カビのなかにはマイコトキシン(カビ毒)と呼ばれる毒素を産生するものもあるが、まったく無害なものもある。そして、少量のカビであれば、基本的に心配する必要はない。 ベネット氏は「カビは通常のエアロゾル(空気中に微粒子が浮遊している状態)の一部です」と言う。「私たちが呼吸する空気中にはたくさんの微生物が含まれています。私たちの体の表面も微生物だらけです。私たちは近年、微生物を根絶することを強調するあまり、多くの微生物が、ごく普通の、良い存在であることを忘れています」
文=Leah Worthington/訳=三枝小夜子