アナウンサー内定取り消しで日テレを提訴 「内定」の法的な性格とは? 弁護士・蒲俊郎
来年4月に入社予定のアナウンサー内定を取り消されたとして、東洋英和女学院の大学生が日本テレビを相手に訴訟を提起したことが話題となっている。そもそも、「内定」とは、どのような法的性格を持つのか。企業法務や労働問題に詳しい弁護士の蒲俊郎氏に聞いた。 ------------- 企業は全ての採用選考プロセスを通過した段階で、「合格」つまり正社員として迎え入れたいと決めた応募者に対し、内定通知書を交付して採用の意思表示を行います。この行為を一般に「内定」と呼んでいます。 では、この内定を受けた社員は、法的にはどのような立場にあるのでしょうか。まだ正式の雇用契約が成立したわけではなく、いわゆる「正社員」になった訳ではありません。この点、最高裁判所は、「始期付解約権留保付労働契約」が成立したとしています。「始期付」とは、新卒者の場合、通常、大学卒業後の4月1日が就労開始日になるということです。「解約権留保付」とは、会社が、就労開始までの間、採用内定通知書や誓約書に記載されている採用内定取消事由(たとえば、提出書類の虚偽記載、卒業不可、健康状態の悪化、その他入社後の勤務に不適当と認められる事由の発生など)が生じた場合、労働契約を解約できることを意味します。つまり、理屈上は、正社員を解雇する場合に必要とされるほどの厳しい要件がなくても、会社は、一定の合理的理由があれば内定取消も可能ということになるわけです。 ただ、就職は人生の一大事であり、内定を受けたことにより他社への就職活動の機会を奪われることも想定され、内定取消が安易に認められて良いはずもありません。この点、最高裁判所は、「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」としています(昭和54年7月20日判決)。つまり、雇用契約の締結に際して、企業が個々の労働者に対して優越した地位にあることを踏まえて、内定取消事由に一定の制約を認めているわけです。今回の日テレによる内定取消も、この基準を満たすか否かが争われることになるわけです。