昭和から平成にかけての隠れた名作時計を紹介する連載企画。今回は、1980年代にIWCの経営を支えたPORCHE DISING by IWC（ポルシェデザイン バイ・アイダブリューシー）のオーシャン2000に注目。

機械式時計が低迷するなかで生き残りをかけて独創的なモデルが生み出された1970年代、趣味性の高い機械式時計を求める愛好家の需要を受けて工芸品的な時計が復活した80年代、そして名門の復活と新興ブランドの誕生を背景にアイコンモデルを輩出した90年代。 【オーシャン2000のディテールをもっと見る】 この時代の時計には単なる“中古時計”という評価の枠では収まりきらない、アイコニックな意匠を備えた名作を見つけることができる。今回は、1980年代にIWCの経営を支えたポルシェ・デザインとのコラボレートブランド、PORCHE DISING by IWC（ポルシェデザイン バイ・アイダブリューシー）のオーシャン2000に注目。

元々は旧西ドイツ軍からの要請を受けての軍用ダイバーズであり、基本デザインを踏襲しつつ、細かい仕様を変えて82年に市販用のモデルを発売。2000m防水のハイスペックに加え、従来のダイバーズウオッチと一線を画すスマートな意匠が人気を博した。

ポルシェ創設者の孫であり、名車として知られる911や9 04を手がけたフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェが1972年に設立したデザインスタジオ、ポルシェ・デザイン。多彩なプロダクトを生み出しているが、同社が最初に手がけたのが時計である。 IWCとは75年から94年まで業務提携を結んでおり、78年に登場したコンパスウォッチを皮切りに、チタニウムクロノグラフなど、洗練された意匠と機能性を両立した時計を輩出。いずれも名作揃いだが、なかでも最大のヒット作となったのが“オーシャン2000”だ。

■Ref.3519。TI（42mm径）。300m防水（当時）。自動巻き。USED。1988年製。参考商品

PORCHE DISING by IWC（ポルシェデザイン バイ・アイダブリューシー） オーシャン2000 機雷の除去を任務とする特殊部隊で採用された特殊ダイバー用モデル。機雷の処理防止装置が磁気に反応して爆発しないように非磁性の仕様に改良されており、ローターに特殊なベアリングを採用したほか、ヒゲゼンマイにニオブ-ジルコニウム合金、バランススタッフとアンクルにはベリリウム金属製のパーツが採用されたとされている。 一説には1984年から90年までに50本ほどが製造され、軍用モデルのなかでも特に希少性が高い。通常、軍用モデルには白い秒針が採用されるが、写真のモデルはメーカー修理の際に市販用に交換されているようだ。