実話だからなお響く、自閉症の「ぼく」とパパの推しチームを見つける旅、ドイツの全サッカークラブの試合を観戦に
■ 100人に1人が自閉症スペクトラム症 電車内やバス停、公共の場所で「座りたい」「お腹が空いた」と周りを気にせず、大きな声で騒いでいる子どもを見て、「なんてわがままなんだ」「どういう教育をしているのかしら」と思ったことはないだろうか。もしも親がそばにいるのなら、「どうして叱らないのか」「躾がなっていない」と考えたことはないだろうか。 【写真】自閉症の男の子と父の笑って泣ける挑戦を描いた『ぼくとパパ、約束と週末』の劇中カット 今や子どもの約100人に1人が自閉症(スペクトラム)とされる時代。彼らは人の心の動きがよくわからないため、人間関係が上手く作れず、集団になじめない。 独自の強いこだわりを持ち、変化を嫌うため、急な出来事に対処したり、新しい環境に適応したりするのが難しい。それはまるで地球の基準で暮らさなければならない異星人のよう。 パニックを起こす本人はもちろん、家族も苦しんでいる。が、周囲には理解されず、勝手な子どもに見えたりする。 『ぼくとパパ、約束の週末』にも同様のシーンがある。息子を守ろうと向かっていく母親。息子を庇おうとその場を去る父親。対処法はそれぞれだが、どちらも息子を深く愛していることに変わりない。 『ぼくとパパ、約束の週末』は自閉症の息子ジェイソンとその父親のミルコがジェイソンの“推しチーム”を探そうと、週末ごとにドイツ中のサッカー・チームの試合を観て回る物語。実話が元になっており、ドイツでは100万人動員のNo.1ヒットを記録した。
幼い頃に自閉症と診断されたジェイソン。彼の生活には独自のルーティンとルールがあり、それらが守られないとパニックを起こしてしまう。自分の興味のあることはとことん知っているのに個性が強すぎるせいか、学校でも度々、トラブルを起こす。 ■ 全56チームの試合を見ないと気が済まない ある日、クラスメイトから好きなサッカー・チームを聞かれたのに答えることができなかったジェイソンは“推しチーム”について、考え始める。彼らは「ゆりかごの中で好みが決まる」と生粋のサポーターであるのが当然のように話し、ジェイソンは訳がわからない。 祖父から「生まれた街のチームが好きになるという意味だ」と教えてもらうが、ジェイソンは「パパはデュッセルドルフ、ママはドルトムントだよ。生まれた街と関係ない。ただの偶然だ」と猛抗議。好きなチームを自分で決めたいと家族の前で宣言する。 両親は各々の好みのチームを推すが、物事を徹底的に理解しないと気が済まないジェイソンはブンデスリーガ1部、2部のみならず、3部までの全56チームを自分の目で見て、選びたいという。 こうして、それまでジェイソンのことを母に任せっきりで、働いてばかりだったパパとジェイソンのドイツ中のスタジアムを巡る週末の旅が始まった。