実話だからなお響く、自閉症の「ぼく」とパパの推しチームを見つける旅、ドイツの全サッカークラブの試合を観戦に
1 何があっても最後まで観戦する 2 サポーターの席に座る 3 (選手は)地味なシューズ 4 (スタジアムの)広告が控え目 5 ネオナチのサポーターは禁止 6 残念なマスコット(のチームは)禁止 7 (エスカレーター、障がい者用トイレなどの設備)環境や持続可能性(サステナビリティ)の重視 8 選手が円陣を組まないこと 聴覚や味覚、触覚などに敏感すぎる知覚過敏の症状がある自閉症。ジェイソンは独自のルールで推しを見極めようとする。 父親が観たい贔屓のチームやチケット争奪戦の強豪同士のマッチング、あるいは効率的に回るなどの思惑はジェイソンには通用しない。毎回、自ら作ったくじを引いて、公平に行く場所を決める。なんとも気が遠くなる船出だ。 ■ 自分で決めたルールで成長するジェイソン やっとのことでスタジアムに着いても、今度はボディーチェックが待ち構えている。自分が決めた人以外、つまり他人から体を触れられることを極端に嫌うジェイソン。それでも関門を突破しなければ、試合を見ることができない。 競技場に入れば、入ったで、大きな音がジェイソンは苦手。人々の歓声や怒号、鳴り物、酔っ払いに絡まれることもある。 本来なら、そこでパニックを起こしそうなジェイソンだが、自分で決めた第一のルール「何があっても最後まで観戦する」を最優先することで、一つずつ、困難を乗り越えていく。 いつも自分の盾となってくれていた母親とだったら、甘えていたかもしれない。父親という慣れない相棒との旅で、着実に成長するジェイソン。
一方、これまでジェイソンとの時間をなかなか取れなかった父親も対応に戸惑いながら、息子との大切な思い出が一つまた一つと増えていく。 ■ ハリウッドでのリメイクも決定 全チームを見なければ意味がない。決められなければ、今度は全ヨーロッパ、21万5000のチームを見ると言い張るジェイソン。果たして、納得のいく成果を得られるのか。 実は劇中、ミルコとジェイソン役の役者たちに話しかけているのが、本物のミルコとジェイソン父子なのだとか。2人とも流暢に台詞を操っているが、意外なことにお父さんの方が撮影に何時間もかかってしまったそう。 冒頭で書いたような、自閉症への差別と偏見がなくなったらと生まれた本作。早くもマーク・ウォールバーグ主演でハリウッドリメイクが決まっている。ちなみにその「Weekend Warriors(原題)」で父子が見に行くのはサッカーではなく、NBAである。 『ぼくとパパ、約束の週末』 11月15日(金)より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー 監督:マルク・ローテムント(『5パーセントの奇跡嘘から始まる素敵な⼈⽣』) 出演:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ(『100⽇間のシンプルライフ』) セシリオ・アンドレセン、アイリン・テゼル 配給:S・D・P ©2023 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH
髙山 亜紀