世界バンタム級王者・中谷潤人が語る井上尚弥vsルイス・ネリ戦。今後「戦いたい王者」は?
5月6日、東京ドーム。世界スーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥は劇的な逆転KOでルイス・ネリに快勝し、4万3000人の観衆を熱狂させた。この結果を受けて、井上は米老舗ボクシングメディア『ザ・リング』のPFP(パウンド・フォー・パウンド=全階級を通じた格付けランキング)で1位に返り咲き(その後2位に後退)、日本ボクシング史に新たな1ページを刻むと同時に、〝モンスター〟の愛称をより絶対的なものにした。 【写真】36年前に「東京ドームで初めて勝った」ボクサー 「歓声の大きさが凄かったですね。試合も刺激的で、良い時間を過ごすことができました」 WBC世界バンタム級王者の中谷潤人は、現地観戦した感想をそう話した。 4団体すべて日本人が独占したバンタム級世界王者の中でも、頭ひとつ抜けた存在と言われる中谷。同階級の統一戦、そして将来的に井上尚弥戦も期待され始めたことについて、どう受け止めているのか。次戦、7月20日の防衛戦に向け、師匠ルディ・エルナンデスの待つ米ロサンゼルスへ発つ直前、心境を聞いた。(全2回の前編) ■中谷が見たバンタム級ふたつの世界戦 ――東京ドームで現地観戦した感想を教えてください。 中谷 井上尚弥選手の試合はもちろん印象的でしたが、どれも良い内容の面白い試合ばかりでした。特に(自分と同じ階級の)バンタム級の2試合、武居由樹選手とジェイソン・マロニー選手、井上拓真選手と石田匠選手の試合は、戦前から気になっていました。 ――まず、WBOの新チャンピオンになった武居選手の試合について。戦前はどちらが勝利すると予想していましたか? 中谷 マロニー選手が、最終12ラウンドに見せたような展開で試合を支配して判定勝利すると思っていました。ただ予想よりも、マロニー選手はアクションが遅くなってしまいましたね。 ――どうしてそういう展開になったと考えますか? 中谷 武居選手本人がどう考えていたのかはわかりませんが、マロニー選手を懐に潜らせない工夫がうまかったように感じました。ボディ中心に攻撃を仕掛けて動きを止めていたので、マロニー選手は終始、武居選手の懐に入りにくそうにしていました。結果、武居選手はしっかり自分の距離を保ちながら手を出せたことでマロニー選手の仕掛けを遅らせて、試合を支配できたように思います。 ――武居選手は2ラウンドにローブローで減点を取られても消極的にならずにボディを狙い続けることで、マロニー選手は後手にまわる時間が長くなりましたね。