勤続15年目で年収350万円ですが、定年後も年金以外の「収入」を得ないときついでしょうか?
「勤続15年で年収350万円、今後も大幅な年収増は見込めない」と将来に悩む方から相談を受けました。このような状況では、定年後、年金だけで暮らしていくことは厳しいのでしょうか。考えてみます。 ▼年金が「月10万円」で老後が不安…持ち家で「貯金」と「退職金」があれば大丈夫? 生活費を試算
年収350万円で将来受け取れる年金額はどれくらい?
まずは、年収350万円で受け取ることのできる年金額の試算をしてみましょう。計算には厚生労働省の公的年金シミュレーターを用い、条件は下記のように設定します。 ・1985年6月11日生まれ ・20歳から21歳までは学生として国民年金に加入(付加納付有) ・22歳から59歳までは年収350万円で就労し厚生年金に加入 この場合、65歳から受け取ることのできる年金額は年間146万円となりました。月額換算するとおよそ12万2000円です。厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度末の厚生年金受給者の平均額は月額14万4000円のため、これは平均より2万2000円ほど低い額となります。 なお、「勤続年数15年で年収350万円」という収入も、平均より低い額となります。国税庁の民間給与実態統計調査によると、勤務年数15年から19年の場合、男女計での平均年収は528万円となっています。 同世代と比べて収入が限られている以上、年収350万円の方は老後の準備をより念入りに行うことが必要となるでしょう。
12万2000円の年金のみで生活はきつい
定年後、65歳から月換算12万2000円の年金のみで生活することは、そう簡単ではないと考えられます。 総務省統計局の家計調査によると、月々の支出は65歳以上の夫婦のみの無職世帯でおよそ27万円、65歳以上の単身無職世帯でおよそ16万円となっています。 夫婦のみの世帯・単身世帯ともに、12万2000円の年金のみで生活することは厳しいものがあるでしょう。仮に、夫の収入が厚生年金12万2000円、妻の収入が国民年金およそ6万5000円という夫婦の場合、世帯の合計収入は18万7000円となり、平均的な月々の支出27万円には遠く及びません。 年金だけでは厳しくとも、十分な貯金があれば暮らしていけるのでは? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、例えば単身世帯で考えた場合、毎月の不足金額はおよそ3万8000円ですが、年間では45万6000円となり、老後の生活が20年間続くと仮定すると総額912万円も必要になります。 このように、年金のみで生活するためには、単身世帯でも1000万円近くの貯金が必要となります。不可能ではありませんが、そう簡単なことでもないでしょう。