チェ・ミンシク 「破墓」の悪霊「本気で怖がった」 「演技の神髄は、まねではなく信じること」
韓国で観客動員1200万人の大ヒットとなったホラー映画「破墓 パミョ」で主演したチェ・ミンシク。「シュリ」「オールド・ボーイ」など多くのヒット作に出演した韓国映画隆盛の立役者ながら「まだまだ三流」と謙虚な姿勢を崩さない。「これからやってみたいのはラブストーリー」と意外な一面も見せてくれた。 【写真】やってみたい役は「恋愛もの」と語る「破墓/パミョ」のチェ・ミンシク
霊魂と人間の関係に興味あった
「破墓」は謎めいた墓から悪霊が解き放たれ、霊をはらう巫堂(ムーダン)や土地の吉兆を判断する風水師、墓の改葬を仕切る葬儀師らが戦うオカルトホラー。陰陽道や霊の存在など、韓国の死生観を反映した物語だ。 「元々(目に見えない)形而上学的なイメージや霊魂、魂、神と人間の関係などに興味があった」という。チャン・ジェヒョン監督は「プリースト 悪魔を葬る者」「サバハ」などのホラーで知られる。「現実的ではないものを、説得力のある作品にする力のある監督。どう作るのか気になっていた」 「死後の世界や魂、生者と魂は通じ合うといったことは信じているが、幽霊に遭遇したことはないし、怖いです」と笑顔を見せた。「ただ、霊魂や幽霊は恐怖の対象になりがちでも、機械が感じることはない。人間だけが持てる極めて特殊なものと思っている」 自身は風水と、どうかかわってきたのか。子ども時代にさかのぼる。「母や祖母と行っていた寺の僧侶が風水に詳しく、引っ越す場合はどの方角がいいとか、家の門はどっち向きがいいとか聞いて育ち、体に染みついている」。風水を論理的に説明する。「風水は東洋哲学。迷信と思っている人もいるし、キリスト教文化では軽んじられるが、実はとても科学的だ」と言い、お墓の最適な場所など理にかなった考えであることを指摘。「昔の人が大地を見て、自然を眺める視点から生まれたものだから」と話した。
風水師は見ているものが違う
映画の中で風水師に見えるためにどんな工夫をしたのか。答えはシンプルだ。「何も気を使わなかった。風水に関与している人は年配の人が多く、どこにでもいそうなおなかの出ている韓国のおじさんだ。ただ、ものを見る視点が違う。サンドクは40年間風水師として生きてきた。山で尾根や木、水の流れを見る時も、登山客はきれいだとか言う。しかし風水師は、自然を観察する視点が一般人とは決定的に異なる。その点は逃さず演じたつもりだ」というのだ。 確かに、サンドクの見た目は普通のおじさん。これまでの多くの作品に比べ、怖くないチェ・ミンシクが映っていた。「人や対象に恐怖を与える役柄が多かったかもしれないが、今回は恐怖にさらされる、いわば被害者のような役。チャン・ジェヒョン監督が私をキャスティングした理由の一つが『恐怖におののき、震えている姿を見てみたい』だったそうです」。そう言いながら笑い転げた。 これまでとある意味正反対の役を演じた感想を聞くと、演技論に。「形而上学的なものに対して恐怖を感じる役なので、マインドコントロールをしっかりしないといけなかった。演じる時に『これはウソ』『映画だから』と思ってはダメ。とにかく信じる。本当に怖い、威圧されていると自身をコントロールしていた」と話した。