正直、ありがたい…「長生き」にも「インフレ」にも対応する〈公的年金〉の強み【経済評論家が解説】
正直、ありがたい…「長生き」「インフレ」に対応
公的年金は、金額的に老後資金の重要な柱であるのみならず、老後資金の最大のリスク(長生きしている間にインフレが来て老後資金が枯渇してしまう可能性)に対する備えとしても最強です。 年金は、どれほど長生きをしても最後までしっかり払ってもらえます。しかも、インフレが来ても、原則としてその分だけ年金支給額が増えるので安心です。 年金制度は、自分たちが支払った年金保険料を老後に自分たちが受け取る制度にはなっていません。現役世代が支払った年金保険料を高齢者たちが山分けするというのが基本的な制度設計です。 平均寿命より早く亡くなった人が受け取るはずだった年金を、平均寿命より長生きした人が受け取るので、どれほど長生きしても最後まで受け取れるのです。 インフレになると、高齢者の生活費が嵩みますが、現役世代の給料が増えることになります。そのため、現役世代が支払う年金保険料を値上げすることによって、高齢者に支払う年金を増額することができるのです。
少子高齢化で「年金受給額が減少」する…?
現役世代が高齢者の年金を負担する制度は、上記のようにインフレに強いというメリットがある一方で、少子高齢化には弱いというデメリットがあります。年金保険料を支払う現役世代が減っていく一方で年金を受け取る高齢者が長生きするために年金財源が不足しかねないわけです。 そのため、将来の高齢者が受け取れる年金はインフレ調整後で現在の高齢者より少なくなる可能性が高いでしょう。もっとも、年金だけで生活する場合の水準が現在の高齢者より1割か2割低い、といった程度ではないでしょうか。 それさえも、起きないかもしれません。1つには、多くの高齢者が元気で働くようになると、年金保険料を今より長い期間にわたって払ってもらおう、という制度改正がなされるかもしれないからです。もう1つには、読者自身が定年後も長く働くことで年金受け取り開始年齢を繰り下げることにより、毎月受け取れる年金の額が増額になるからです。