衆院選挙の結果と金融市場の反応
3)リスク・シナリオ:自民党・公明党が僅差で過半数割れ⇒株安、円安、債券安(トリプル安)
自民党・公明党が僅差で過半数割れとなる場合には、追加公認あるいは国民民主党など一部の野党を連立与党に取り込むことが予想される。その場合、経済政策はより左派色を強める。また、「石破カラー」はより強く封じ込められ、金融政策正常化や財政健全化はさらに後退する。 金融政策正常化の遅れは円安要因となり、それは株高の追い風になる。しかし、政治の混乱や先行きの政策の不確実性による株式市場への逆風がそれに勝るだろう。さらなる財政赤字拡大への懸念が債券安(長期金利上昇)を生み、それも株式市場の逆風となる。全体としては株安になりやすい。
4)テールリスク・シナリオ(1):自民党・公明党が大差で過半数割れ⇒株安、円高、債券安
政局の混迷が一気に強まる。新たな連立政権樹立に向けた議論は難航するが、最終的に立憲民主党を中核とする現在の野党連合が政権を担うようになる可能性がある。その場合、立憲民主党が支持する金融政策の正常化がより進むとの観測が浮上し、円高傾向が強まる。政治の混迷、円高の影響、財政拡張策への懸念から生じる債券安の3点が、大幅な株安に繋がる可能性がある。
5)テールリスク・シナリオ(2):自民党・公明党が現在の279議席を上回る⇒株高、円高、債券高(トリプル高)
政治の安定が強まる。政権基盤を固めた石破政権が、独自色を強め、財政健全化、金融政策正常化、成長戦略が大きく進むとの観測が強まる。金融政策正常化期待の高まりは円高要因となり、それは株価に逆風となる。しかし、政治の安定や成長戦略進展への期待、財政健全化による債券高(長期金利上昇)が株高要因となる。全体としては株高が見込まれる。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英