<ソチ五輪>葛西紀明が銀メダルを獲得した『5つの理由』
横川コーチによると、「葛西は、すでにソチ入りする前にジャンプの完成形を手に入れていた。それを本番でできればメダルに届くという自信があった。だから、スタッフも『思い切って休んでいこう』と言えた。逆に、練習に出て来ないことで、各国のコーチ陣や選手たちは相当振り回されていたと思う。『また寝てるのか?』という感じだった」。つまり、ケガの巧妙で、ライバルたちを心理的に不安にさせることができたのだ。 4つ目は、葛西自身の“兄貴力”とも言えるリーダーシップから生まれたチームの結束だ。葛西が2本目のジャンプを133メートル・5メートルとまとめると、その瞬間、すでに飛び終えていた3人の後輩たちが一斉に葛西に駆け寄って行った。この時点でメダルは確定していた。 竹内択が、「本当にかっこいい」と言えば、伊東大貴は「紀(のり)さんがメダルを獲ってくれて、うれしい。いい先輩を持ったなと、つくづく思う」と感慨深げ。最年少20歳の清水礼留飛は「日本人の先輩がメダルを取る瞬間にいることができてうれしい」と称えた。同じ国といえど、個人戦ではライバルだが、彼らには、互いにリスペクトする気持ちがある。そして何より、葛西が、今なお見せる凄さが、後輩たちの心をつかんでおり、その日本チームの結束ムードが41歳のジャンパーの快挙を後押しした。 横川コーチは「今日は若手が皆、葛西の援護射撃をしてくれたと思う。全員トップ10近くにいた。そういう意味で、葛西も気楽にできたと思う」と説明した。葛西は「すぐに(竹内)拓と(伊東)大貴と(清水)礼留飛が走ってきて、『紀さん、勝ちましたよ』と言われたので、涙が出そうなぐらいうれしかった」と相好を崩した。 5つ目にマルチサポートハウスや用具を提供するミズノなど周辺の支援体勢も良かった。ロンドン五輪から設置され、威力を発揮しているマルチサポートハウスは、ジャンプ勢のコンディショニングにも貢献した。風呂、食事、トレーニングルーム。さまざまな面で日本人スタッフのきめ細やかな協力が得られることで、選手はよりリラックスしながら戦闘態勢を整えられる。