「亡命の触手は何度もあったはず…」巨人が獲得のライデル・マルティネス「総額50億円超」マネーゲームの舞台裏と「単に金額だけじゃない」決断の背景
中日ファンを襲う「ライデル・ロス」
マルティネス流出。半ば覚悟していたとはいえ、ドラゴンズファンには「ライデル・ロス」が広がった。寂しいという感情。どうするんだという不安。そして巨人だけはいやだったという憤り。SNSでもさまざまな声が飛び交っていたが、わかってはいるのだ。「チームとの別れを決めたとき、涙を流す外国人などいなかった」ということを。 巨人が発表したのはマルティネスと契約したという事実だけで、その内容については年数も金額も公にはされていない。慰留に努めた中日側は4年、年俸10億円ほどの額を提示したとスポーツ各紙は報じている。筆者はシーズン中に「1000万ドル」を決着ラインだと予測したが、中日の提示条件が事実なら、巨人はまさしく15億円程度は出しているはずだ。
亡命の触手は何度も…
「僕は亡命はしたくない」 筆者がシーズン中の記事で、マルティネスが名古屋のテレビ局CBCのインタビューで、こう答えたことを書いている。言うまでもなく、亡命には大きなリスクが伴う。事前に、しかも放送局に予告するはずはないのだが、これはマルティネスの本心だと推察する。 亡命し、MLB球団と契約したキューバ人野球選手は数え切れないほどいるが、そのほとんどは10代後半から20代前半でのいわゆる青田買いである。マルティネスは28歳。常識で考えれば、もっと若い頃に亡命の触手は何本も伸びていたであろう。そのどれを選んでいても、今回の巨人との契約で得られた額よりも、1桁多かったはずだ。
「金額」だけではない移籍の理由
マルティネスの人生におけるプライオリティ最上位は、金銭ではない。亡命の誘いを断り、中日に残る可能性を最後まで模索した。金銭はすべてではないが、将来の生活を考えれば大切ではある。何とか巨人と同等に近い額まで中日が譲歩してくれないだろうか。それが9回に君臨し、ドラゴンズファンに誇りと安心をもたらしてきた絶対守護神の望みだった。 中日側の慰留条件は、他の選手と比較しても破格を通り越した額だった。しかし、長年培ってきたキューバ政府との太いパイプをもってしても、ここが限界だった。巨人による主力の強奪は1990年代以降の野球界で、何度も繰り返されてきたことではあるが、今回に限れば単なる金額で導き出された結論ではなさそうだ。なおマルティネスの入団会見は、来年キャンプ前の来日後に行われる予定である。
(「草茂みベースボールの道白し」小西斗真 = 文)
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