アルマーニの「後継者」候補が語るハリウッド、美しさ、ジェンダーの壁
ジョルジオは映画の世界にいち早く参入した
その後アルマーニは、映画界と関連して、多くの画期的な出来事をへてきた。ケイト・ブランシェット、ジュリア・ロバーツ、アン・ハサウェイ、ジョディ・フォスター、グレン・クローズなどは、それをじかに経験してきた。 「ひとりの人間、つまり私の叔父が、ソフィア・ローレンもアン・ハサウェイもドレスアップさせることができるというのは、素晴らしいことです。どちらも映画界の王族とも言えるような人物ですが、異なる時代とスタイルを代表する存在ですから」 彼女は誇らしげにブランドの哲学についても語る。「それは、仕事ですでに確固たる地位を築いた人にも、これから道を切り開こうとしている人にもサービスを届けることです。メゾンとセレブリティの関係は、宣伝の手段としてではなく、互いへの敬意と信頼によって成り立っているのです」 今やファッションは美学の追求だけでなく平等、多様性、インクルージョンといった価値観の擁護を目指している。 そしてときには、仕事上の関係が友情に変わることもある。メゾンとニコール・キッドマンとの間にはそうした絆が築かれた。 「彼女はエレガントな女性だからこそアルマーニを着るのです。私たちのデザイン、特にオートクチュールコレクションのジョルジオ アルマーニ プリヴェを彼女がいかに着こなすのかを見るのが好きです」 アルマーニは2022年、アカデミー賞授賞式の一環として、このオーストラリア人に敬意を表するパーティを開催した。 次にアルマーニが挑んだのは、大規模な映像作品の衣装と、よりゆったりとした着心地の良い女性のワードローブだった。ジョルジオがビッグスクリーンへの進出を果たしたのは、映画『アメリカン・ジゴロ』(1980年)によってだ。 「この作品で叔父は、世界中の観客に向けて自らの美学に命を吹き込むものとしての映画の力を見抜きました。だからこそリチャード・ギアとローレン・ハットンの衣装デザインを引き受けたのです」 映画の世界にいち早く参入したことで、ジョルジオはこの分野でも愛される存在となった。これが、アルマーニというブランドを世界的レベルに引き上げ、世界にその存在を知らしめる真の起爆剤となったとロベルタは考えている。 以降、アルマーニは20本を超える映画とのコラボレーションを果たしてきた。この分野での経験により、あらゆる課題や問題を予測し、注文品の発送前にそれらを解決する能力も養われた。次なる挑戦も実行に移されており、そこでロベルタは積極的に重要な役割を担い続けている。 それは、ブランドの男性向けと女性向けのサービスをより平等にしようというものだ。ジョルジオが、快適でユニセックスなファッションを目指したリラックス感のある脱構築的なテーラリングの先駆者だとすれば、それをさらに進めるためにロベルタは、男性は自分でスケッチしたオーダーメードのスーツを楽しむことができるのに、なぜ女性は同じことができないのか、といった疑問を投げかけた。それは、彼女がアルマーニにもたらした変化のひとつであり、彼女の叔父が始めたユニセックスファッションのレガシーのための取り組みでもあった。